研究課題/領域番号 |
15K07953
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
福永 理己郎 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (40189965)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / プロテインキナーゼ / 細胞増殖 / 翻訳調節 / MAPキナーゼ |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究計画に基づいて,以下の研究を実施した。まず,各種Mnkノックアウト細胞(Mnk1-KO, Mnk2-KO, Mnk1/2-ダブルKOマウス由来の株化線維芽細胞)を用いて,増殖因子や過バナジン酸刺激によるMnk活性化動態を検討した結果,Mnk1が増殖刺激によって速やかに活性化されるのに対し,Mnk2は逆に不活性化されることを示す結果を得た。また,Mnk1とMnk2では2種類のMnk阻害剤(CGP57380及びCercosporamide)への感受性も異なることが示唆された。Mnk1とMnk2が全く逆の活性化動態を示す例はこれまで報告されておらず,TORシグナル系からのクロストークとの関連について解析中である。 次に,Mnk1とMnk2の活性制御機構を解析する目的で,Mnk1とMnk2のキメラ分子発現プラスミドを6種類構築した。これらをMnk1/2ダブルKO細胞で発現させて増殖刺激によるMnk活性化動態を検討した結果,Mnk1型(誘導的活性化),Mnk2型(誘導的不活性化),及び中間型(活性不変)に分類でき,活性化動態を決定するのは主に2か所のリン酸化部位(ヒトMnk1のThr209及びThr214残基)であることが示唆された。 他方,miR30模倣RNA発現系を利用して各種のヒト由来細胞でMnk1を誘導的に発現抑制する系の樹立を試み,同一標的に対する複数のmiR30模倣RNAを共発現させることで抑制効率が高まることを見出した。 また,トランスレイトーム解析(mRNA翻訳プロファイリング)の第1段階として,エストロゲン受容体(ER)と活性化型変異Mnk1のキメラ分子を発現するMnK-DKO細胞を樹立した。この細胞を4-hydroxy tamoxifenで処理することによってeIF4Eの急速なリン酸化が生じることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『研究実績の概要』で記したように,当初の計画はおおむね順調に進展した。しかし,miR30模倣RNA発現系を用いたMnk1ノックダウン系では,eIF4Eリン酸化レベルの低下は観察されたが,生理的機能を解析する上で十分な抑制には及ばないことが示され,この部分に関しては予定通りに計画を進めることができなかった。この点についてはCRISPR/Cas9システムを利用することにした。
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今後の研究の推進方策 |
『研究実績の概要』で記した成果を踏まえ,それらをさらに発展させた研究をH28年度以降の計画に沿って実施していく予定である。特に,Mnkの活性化動態について,研究計画を立案した段階では,Mnk1が各種の刺激によって誘導的に活性化されるのに対してMnk2の活性は構成的であり大きく変動しないと予想していた。しかし今回,Mnk2はチロシンキナーゼシグナル伝達経路の活性化に応答して逆に不活性化される可能性が見出されたことは意外な結果であり,この知見を踏まえて研究を進める必要性が生じた。また,『進捗状況』で記したようにmiR30法によるMnk1ノックダウン系では十分な抑制が得られなかったことから,新たにCRISPR/Cas9システムによってヒト各種培養細胞のMnk1遺伝子破壊を行うことにした。H28年度は,HeLa細胞を用いてMnk1遺伝子破壊を行う計画であり,CRISPR/Cas9発現プラスミドの構築を進行中である。
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