研究課題
乳がんの約70%は女性ホルモンであるエストロゲン依存性であり、主に抗エストロゲン剤であるタモキシフェンをはじめとする内分泌療法が、術後補助療法や進行・再発乳がんの標準治療法として行われている。しかし、内分泌療法中に再発しやすい、内分泌療法を施行した80%以上もの症例で、初発部位にはなかった治療耐性能力を獲得する、といった生命予後を脅かす問題が指摘されている。これまで、本研究課題では、亜鉛イオンとその制御分子である亜鉛トランスポーター(ZIP6)は、乳がん悪性化の鍵を握り、乳がん治療の新戦略の有望なアプローチとして期待できることを示してきた。本年度は、乳がん細胞内外の亜鉛イオンがタモキシフェンの薬剤感受性に与える影響とその機序について検討し、亜鉛イオンの併用がタモキシフェン治療耐性の回避に利用できる可能性を試みた。女性ホルモン依存性ヒト乳がん細胞MCF-7に対するタモキシフェンの薬剤感受性は、塩化亜鉛併用により増大し、その感受性増大は細胞内亜鉛イオン濃度に依存した。さらに、MCF-7における亜鉛の取り込みに重要な役割を果たしているZIP6をノックダウンし、塩化亜鉛併用によるタモキシフェンの感受性増大にZIP6が関与しているか否か、検討した。ZIP6特異的安定ノックダウンMCF-7細胞は、ZIP6の発現はコントロール群と比較して約10%程度にまで抑えられ、その発現量に伴い、亜鉛イオンの輸送活性は顕著に抑制された。このZIP6特異的安定ノックダウンMCF-7細胞に48時間タモキシフェンを処置すると、コントロール細胞と比較して、タモキシフェンのIC50値は約2倍と著しく高く、タモキシフェンの感受性が低下した。以上より、ZIP6による亜鉛イオン輸送活性がタモキシフェンの感受性を制御できることを細胞レベルで初めて示し、亜鉛は乳がん薬物治療の新戦略の強力なツールとして期待できる。
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