腸管免疫系においては免疫反応の促進と抑制のバランスを保つことが重要であり、その乱れは様々なアレルギー疾患や炎症性腸疾患発症等を引き起こす。この腸 管免疫系における免疫反応のバランスの制御には、レチノイン酸産生制御性樹状細胞(DC)サブセットの役割が重要であり、その性状や分化制御の解明は、腸管 免疫系の理解に欠かせない。我々はこのDCサブセットに転写因子Ikarosファミリーに属するEos遺伝子が構成的に高発現していることを発見した。本研究では、 はじめに、このDCサブセットにおけるEosの役割を明らかにするため、腸間膜リンパ節に存在する樹状細胞を種々の表面抗原(CD11b、CD8α、CD103)で分画し、 それぞれのサブセットにおけるレチノイン酸産生酵素RALDH2遺伝子の発現とEosおよび他のIkarosファミリー(Ikaros、Helios、Aiolos)発現を詳細に比較検討した。その結果、EosおよびHeliosの発現はRALDH2遺伝子と類似していたが、IkarosやAiolosは対照的な発現傾向を示し、RALDH2遺伝子非発現細胞で顕著な発現 が観察された。これらの結果は、腸間膜リンパ節に存在する各DCサブセットの機能において、Eosをはじめとする転写因子Ikarosファミリーがそれぞれ異なった働きをしていることを示唆している。次に種々の炎症性および抑制性サイトカイン発現の制御にEosをはじめとするIkarosファミリーが関与している可能性を考え、種々のサイトカインのレポーターアッセイ系を用いてそれぞれの転写活性への影響を検討した。その結果、樹状細胞サブセットにおいて対照的な発現パターンを示す Eos、Ikarosは、それぞれ異なるサイトカイン遺伝子の発現を選択的に抑制することが明らかになった。
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