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2015 年度 実施状況報告書

超解像顕微鏡を用いた脂質ドメインのインフルエンザウイルスに対する機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K07957
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

阿部 充宏  国立研究開発法人理化学研究所, 小林脂質生物学研究室, 専任研究員 (90415068)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードスフィンゴミエリン / PIP2 / 脂質の非対称性 / インフルエンザ
研究実績の概要

まず、スフィンゴミエリン/PIP2の細胞内の量を変えることで、MDCK細胞に対するインフルエンザウイルスの感染効率が変化するかを調べた。細胞内のスフィンゴミエリナーゼを変化させるために、細胞内でスフィンゴミエリナーゼを過剰発現させた細胞株、およびスフィンゴミエリナーゼの遺伝子変異株を作製した。PIP2を減少させるために、PLCやPLCD1のPHドメインを過剰発現した細胞を作製した。また、細胞膜上のスフィンゴミエリンの量を減少させるために、MDCK細胞膜の外からスフィンゴミエリナーゼを処理した。これらの細胞にインフルエンザウイルスを感染させた後、感染効率をプラークアッセイによって調べた。いずれの細胞でも感染効率に変化が見られなかったことから、脂質の量を変化するのとは別の方法を考えた。
着目したのは、細胞膜の脂質の非対称性である。スフィンゴミエリン/ホスファチジルコリンは細胞膜の外層に、ホスファチジルエタノールアミン/ホスファチジルセリン/PIP2は細胞膜の内層に局在していることが知られている。インフルエンザウイルスの感染効率を低下させるサイクロデキストリン処理は、細胞膜における脂質の非対称性を失わせることが知られている。そこで、フリップフロップに関わる因子を遺伝子破壊することによって脂質の非対称性を変化させた時に、インフルエンザウイルスの感染効率をプラークアッセイによって調べた。その結果、インフルエンザの感染効率が変化することがわかった。この結果から、脂質の量よりは、脂質の非対称性がインフルエンザの感染に重要な機能を果たすことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り用いる細胞の作製を行った。インフルエンザの感染効率を調べた結果、細胞の脂質の量を変化させただけでは感染効率の変化が見られず、脂質の非対称性など、局所的な脂質の変化が、インフルエンザの感染効率に影響を与えることがわかった。これは、予想に反するが、新たな知見である。

今後の研究の推進方策

脂質の非対称性など、局所的な脂質の変化が、インフルエンザの感染効率にどのように関わっているかを調べる。前年度ではフリップフロップに関わる因子をいくつか試しただけであり、どの脂質が関わっているかが限定されていない。そこで、もう少し対象の遺伝子を破壊した細胞株を作製し、感染効率を調べることにより、いずれの脂質の非対称性が関わっているかを明らかにする。また、局所的に脂質の量を変化させるため、Optogeneticな方法により(Idevall-Hagren et al., 2012)、特異的に脂質の分解を行う。これらの脂質の量を変化させた条件下で、インフルエンザウイルスの感染効率を調べる。感染効率に異常がある場合は、さらに詳しく調べる。ノイラミニダーゼ阻害剤で出芽を抑制しながら、インフルエンザウイルスの細胞膜上での局在を超解像顕微鏡システムで観察し、インフルエンザウイルスの代表的な構造タンパク質の再集合が異常になっているかを調べる。

次年度使用額が生じた理由

目的とする遺伝子が、当初の脂質の量を変化するための遺伝子ではなく、脂質の非対称性を変化させるための遺伝子に対象が移ったため、次年度にスクリーニング用のライブラリーを購入し、スクリーニングを行うことにした。そのため、予算の多くを占めていたライブラリーやスクリーニングのための消耗品の経費が次年度に繰り越された。

次年度使用額の使用計画

脂質の非対称性を変化させるための遺伝子に関してスクリーニングを行うため、対象となる遺伝子群が含まれるCRISPR-Cas9やsiRNAライブラリー、抗体などの消耗品として、繰り越した予算を使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件)

  • [雑誌論文] Zds1/Zds2-PP2ACdc55 complex specifies signaling output from Rho1 GTPase2016

    • 著者名/発表者名
      Jonasson EM, Rossio V, Hatakeyama R, Abe M, Ohya Y, Yoshida S
    • 雑誌名

      J Cell Biol

      巻: 212(1) ページ: 51-61

    • DOI

      10.1083/jcb.201508119

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Evaluation of aegerolysins as novel tools to detect and visualize ceramide phosphoethanolamine, a major sphingolipid in invertebrates2015

    • 著者名/発表者名
      Bhat HB, Ishitsuka R, Inaba T, Murate M, Abe M, Makino A, Kohyama-Koganeya A, Nagao K, Kurahashi A, Kishimoto T, Tahara M, Yamano A, Nagamune K, Hirabayashi Y, Juni N, Umeda M, Fujimori F, Nishibori K, Yamaji-Hasegawa A, Greimel P, Kobayashi T.
    • 雑誌名

      FASEB J

      巻: 29(9) ページ: 3920-34

    • DOI

      10.1096/fj.15-272112

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transbilayer distribution of lipids at nano scale2015

    • 著者名/発表者名
      Murate M, Abe M, Kasahara K, Iwabuchi K, Umeda M, Kobayashi T.
    • 雑誌名

      J Cell Sci

      巻: 128(8) ページ: 1627-38

    • DOI

      10.1242/jcs.163105

    • 査読あり

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公開日: 2017-01-06  

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