研究課題/領域番号 |
15K07959
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
佐藤 弘泰 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主任研究員 (50546629)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / 分泌性ホスホリパーゼA2 / 高度不飽和脂肪酸 / 慢性炎症 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
本研究では、sPLA2分子群の遺伝子改変マウスを用いて高脂肪食負荷を実施し、以下のsPLA2アイソザイムの欠損マウスがメタボリックシンドロームと関連した表現型を示す事を見出した。 1. sPLA2-IID:sPLA2-IIDがリンパ節以外に脂肪組織中の抗炎症性M2マクロファージに構成的に高発現しており、肥満により発現が低下すること、さらにsPLA2-IID欠損マウスでは、①高脂肪食負荷による肥満やインスリン抵抗性が増悪すること、②通常食下において、脂肪組織中の高度不飽和脂肪酸 (PUFA) やリノール酸代謝産物が一括的に減少傾向を示し、一方、sPLA2-IID の発現が減少するHFD負荷時ではsPLA2-IID欠損マウスと対照マウスの間で脂質組成に差は認められないことを見出した。 2. sPLA2-III:sPLA2-IIIが前脂肪細胞に発現していること、さらにsPLA2-III欠損マウスでは、①高脂肪食負荷による肥満、脂肪肝、高血糖、高脂血症、インスリン抵抗性が改善すること、②脂肪組織中の一部の脂質メディエーター (PGD2, 12-HETE) が部分的に低下すること、③脂肪細胞の分化と脂肪組織の炎症が抑制されること、④骨髄移植実験より本表現型が非骨髄系細胞のsPLA2-IIIに依存すること等を見出した。しかしながら、脂肪組織だけではPla2g3欠損マウスの表現型を十分に説明できないことがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究からsPLA2-IIDが皮下脂肪に高発現していることを見出し、本酵素が脂肪細胞の褐色化に影響を及ぼす可能性が新たに想定され、sPLA2-IIIが脂肪組織や他の代謝関連組織よりも表皮に高発現しており、sPLA2-III欠損マウスでは皮膚バリア異常が見られることが新たに見出され、sPLA2-III欠損によるメタボリックシンドロームの改善は脂肪組織の変容だけでは説明できないことがわかってきた。 以上のことから、本研究課題の進捗はやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、sPLA2-IIDが脂肪細胞の褐色化に影響を及ぼす可能性について、sPLA2-III欠損によるメタボリックシンドロームの改善が脂肪組織の変容の影響だけでなく、皮膚恒常性の変容によるものか検証する。 さらにsPLA2-X, XIIAについて遺伝子欠損マウスに高脂肪食負荷を行い、メタボリックシンドロームの表現型およびその作用メカニズムについて精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の見込みより物品費、旅費の使用額が抑えられたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用計画として、、国内学会出張費、投稿論文の英文校正費、論文投稿費および印刷費として使用する。残りの経費を試薬消耗品、器具消耗品、実験動物管理維持費、特殊試料 (高脂肪食)として使用する。
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