血液細胞や心筋細胞は、発生学的には側板中胚葉由来の細胞である。側板中胚葉のマーカーはVEGF受容体Flk1であり、Flk1発現(+)細胞が血液細胞や心筋細胞へ分化することが証明されている。一方、最近の研究からFlk1+ 細胞は血液前駆細胞や心筋前駆細胞等の分化能の異なる細胞種が混在したヘテロな細胞集団であると考えられているため、新たなマーカー蛋白質を加えて Flk1+ 細胞をさらに細かく区別することが望ましい。Coxsackievirus and adenovirus receptor(CAR)はアデノウイルス(Ad)の受容体として同定され、その後の研究から、タイトジャンクション構成蛋白質として機能していることが報告された膜蛋白質である。ヒト ES/iPS細胞由来 Flk1+ 細胞において CAR の発現を解析したところ、Flk1+ 細胞中には CAR+ 細胞と CAR- 細胞の両細胞が存在していること、そしてこれらの両細胞は造血系および心筋系の転写因子の発現パターンが大きく異なっていることを見出した。また、Flk1+ かつ CAR+ 細胞(F+CAR+細胞)およびFlk1+ かつ CAR- 細胞(F+CAR-細胞)の分化能を評価したところ、F+CAR+細胞は心筋細胞への分化指向性を有し、F+CAR-細胞は血液・血管内皮細胞への分化指向性を有することが明らかとなり、CAR は Flk1 陽性中胚葉細胞をさらに細かく分別可能なマーカーとなり得ることが明らかとなった。また、マウスにおいてもFlk1+細胞をCAR+細胞とCAR陰性細胞に分別できることが明らかとなり、それぞれ心筋細胞指向性、血液細胞指向性を示した。したがって、in vivo においてもCAR は中胚葉系細胞を細かく分別できるマーカーとなり得ることが示された。
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