研究課題/領域番号 |
15K07963
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小原 祐太郎 山形大学, 医学部, 准教授 (40400270)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ERK5 / カテコラミン / チロシンヒドロキシラーゼ / ankrd1 / MAPK / 神経細胞 / 副腎髄質 / 褐色細胞腫 |
研究実績の概要 |
これまでの研究により、PC12細胞において、ERK5をshRNAでノックダウンすると、カテコラミン生合成の律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼの発現が消失し、ドパミンなどのカテコラミン類の産生が大きく減弱することが明らかになっていた。そこで、この使用したshRNAのオフターゲット効果を否定するために、標的配列が異なる別のERK5のsiRNAで細胞を処理すると、shRNAの場合と同様にチロシンヒドロキシラーゼの発現が、顕著に抑制することをあらためて確認した。 ERK5はankrd1の遺伝子発現を介して、チロシンヒドロキシラーゼを安定化すると推定されていた。このankrd1をsiRNA法でノックダウンし、産生されるカテコラミン類をLC-MS法で定量したところ、PC12細胞は全カテコラミンの約95%をドパミンとして、また5%程度をノルアドレナリンとして合成し、どちらのカテコラミン類もankrd1 siRNAにより、生合成量が有意に減少することが明らかになった。 さらに、ERK5の病理的な役割を解明するために、ヒト正常副腎髄質検体7例と副腎褐色細胞腫11例におけるチロシンヒドロキシラーゼとERK5の発現量を比較検討した。その結果、ヒト正常副腎髄質ではERK5とチロシンヒドロキシラーゼの発現量の間に比較的高い相関性が認められた(R=0.79)。一方、褐色細胞腫ではチロシンヒドロキシラーゼの高発現が認められたが、ERK5の発現量は逆に低下しているという予想外の結果が得られた。腫瘍化した副腎髄質では、ERK5によるカテコラミンの生合成機構が破綻し、何らかの別の機構が働いていると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒト副腎褐色細胞腫は症例数が当大学病院では年2-3例と少なく、必要な検体数を集めるのに年単位の時間がかかることを予想していたが、連携研究者の腎泌尿器外科講座では過去に得られていた褐色細胞腫検体の冷凍サンプルが詳細な患者データとともに多数保管されており、それらの検体を利用することが可能となったため、当初の見込みよりも短期間で研究計画を進められ、貴重なヒト検体を用いた実験結果を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度も研究計画をもとに引き続き、ankrd1のようにERK5によって発現が誘導されるタンパク質midnolinの機能をさらに詳細に調べていく予定である。特にこのタンパク質は中脳に多く発現することから、パーキンソン病との関連性についても明らかにしていく予定である。 さらに、in vivoにおけるERK5の生理的な役割を調べるために、連携研究者の東北薬科大学のグループとともに、マウスにERK5阻害薬を脳室内投与して、脳内カテコラミンの生合成量の変化やそれに基づく行動異常を調べていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に、発光測定用のルミノメーターが優先的に必要になって購入したために、次年度使用額が生じた。そのために、一部の残金を繰越し金として、次年度に使用することにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初、当該年度に購入予定だった吸光度測定用のプレートリーダーを次年度に購入する計画である。
|