細胞性粘菌Dictyostelium discoideum(以降「粘菌」)は、発生生物学や細胞生物学研究のモデル生物として研究されていが、我々は細胞性粘菌類を「未利用創薬資源」と位置づけ、粘菌由来の生物活性物質の探索とそれらをシードとした薬剤開発を進めている。中でも、粘菌由来の多機能分子DIFの研究に注力している。 1)マウス骨肉腫LM8細胞を用いて、Wound-healing(細胞運動)assayを行い、いくつかのDIF誘導体(Br-DIF-1やBu-DIF-3等)がLM8細胞のWound-healingを強力に阻害することを見いだした。 2)ヒトTriple negative乳がん細胞のモデルであるMDA-MB-231細胞の細胞増殖と細胞遊走に対する30種類のDIF誘導体の効果を検討した。その結果、Bu-DIF-3が細胞増殖と細胞遊走の両者を強力に阻害する一方、Br-DIF-1が細胞遊走を強力に阻害することを見いだした。そこで、Br-DIF-1をシードとした新規DIF誘導体を20種類程合成し、それらの遊走阻害活性を検討した。その結果、いくつかのBr-DIF誘導体が強力な遊走阻害活性を発揮する一方、それらの増殖阻害活性は低いことが判明した。 3)いくつかの細菌種を用いて、各種DIF誘導体の抗菌活性を検討した。その結果、いくつかのDIF誘導体は、我々が調べた全てのグラム陽性菌(MRSAやVREを含む)の増殖を強力に阻害することが明らかとなった。 4)マラリア原虫の増殖に対する各種DIF誘導体の効果を検討し、いくつかのDIF誘導体が強力な強力な抗マラリア活性を有することを発見した。
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