研究実績の概要 |
てんかん患者の約3割を占める「難治性てんかん」の制御機構を解明し、治療薬開発へと繋げるため、本研究では下記3項目を実施した。 1. 我々はこれまで、難治性てんかんに有効であることが知られるケトン食療法の作用機序解析を進め、制御分子として乳酸脱水素酵素を見出すだけでなく、それに作用する化合物として抗てんかん薬スチリペントールを報告してきた (Sada et al, Science, 2015)。そこで本研究では、スチリペントールの化学構造を改変することで、乳酸脱水素酵素阻害剤を多数見出すだけでなく、in vivo でも抗てんかん作用を示す化合物も同定した (PCT/JP2016/053764)。 2. ケトン食時に体内で増加するケトン体(アセト酢酸)の作用点を調べ、アセト酢酸が電位依存性カルシウムチャネルを阻害することを見出した。アセト酢酸は、てんかん様活動を示すスライス標本において、興奮性シナプス伝達を強く阻害した。さらに、アセト酢酸の化学構造を改変することで、より強力に電位依存性カルシウムチャネルを阻害するだけでなく、興奮性シナプス伝達も阻害し、in vivo でも抗てんかん作用を示す化合物を同定した (Kadowaki et al, Epilepsia, 2017)。 3. 難治性てんかんとして知られる「海馬硬化症を伴う側頭葉てんかん」のモデルマウスを作成し、その制御機構を調べた。本モデルマウスのてんかん焦点に、アセチルコリン制御剤を微量投与したところ、自発的なてんかん発作活動が抑えられることを見出した。さらに、我々が開発してきたアセチルコリンセンサーをマウス脳内に適用することで、てんかん活動と脳内アセチルコリン濃度の関係を解析するとともに、スライスパッチクランプ法を用いた作用機序解析も行った。
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