研究課題
大動脈解離とは、血流が内膜の亀裂部より内膜と中膜の間に流れ込み、偽腔を形成した状態をいう。その発症には中膜の脆弱さや高血圧などが関与し、大動脈瘤の形成機序と一部共通であると考えられているため、これまで明確にその発症機序を区別し得る報告はなされていない。我々は、大動脈解離発症には中膜の脆弱化・血圧上昇に加え、内皮傷害が最終的な誘因として重要であると考えた。そこで、本研究では内皮機能障害を誘発する薬剤であるL-NAME(NOS阻害剤)を処置したマウスに対して大動脈瘤モデルとして利用されるAngiotensin II (AngII)+BAPN(リジルオキシダーゼ阻害剤)の投与を行うことで、新たな大動脈解離モデルマウスを作製することに成功した。C57Bl/6マウスに7週齢よりL-NAME (10mg/kg/day) の飲水投与を開始する。その後10週齢から6週間AngII+BAPNを浸透圧ポンプを用いて投与した。解離の有無は16週齢における大動脈組織切片のEVG染色にて評価した。その結果、大動脈解離発症率はAngII+BAPN投与群(AB群)に比べ、AngII+BAPN+L-NAME投与群(ABL群)で有意に上昇した。今回使用したL-NAME投与量においては両群間で血圧に有意な差は認められなかったが、10週齢ABL群ではeNOSの発現減少、NOの産生減少をそれぞれウエスタンブロッティング法、グリース法にて確認した。11週齢ABL群では、MMP2、MMP9の活性がAB群に比し有意に上昇していることがザイモグラフィーにて観察された。以上より、本モデルマウスは大動脈解離の病態メカニズムの解明に大変有用となると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究目的はeNOS阻害薬(L-NAME) 投与による薬物誘発性大動脈解離モデルを確立することであった。研究代表者らは内皮機能障害を誘発する薬剤であるL-NAME(NOS阻害剤)を処置したマウスに対して大動脈瘤モデルとして利用されるAngiotensin II (AngII)+BAPN(リジルオキシダーゼ阻害剤)の投与を行うことで、新たな大動脈解離モデルマウスを作製することに成功した。従って、当初の計画に従っておおむね順調に進展していると考えられる。
今後は新規大動脈解離モデルの病態機構を明らかにするため、大動脈解離における血管内皮障害・中膜脆弱化について組織学的・生化学的に評価する。さらに本モデルに対して、スタチン系薬物が大動脈解離病変、炎症反応、各種血液マーカー等に与える影響について組織学的、生化学的に検討する。
3月27日-29日にかけて開催された学会に参加したため、旅費の精算が間に合わず次年度への繰り越しが生じた。
3月27日-29日の学会参加については、次年度に精算を行うこととする。
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