研究課題
本研究課題において大動脈解離発症のリスクを高めると考えられている中膜の脆弱化・高血圧に加え、血管中膜へのエントリー、すなわち“血管内膜の破綻”を薬剤誘発性に惹起させることで大動脈解離を高率に発症するモデルマウスの確立に成功した。最終年度では、ピタバスタチンと同様にERK5の活性化、一酸化窒素合成酵素 (eNOS)発現上昇作用を有するポリフェノールの一種であるケルセチンが、LABモデルにおいて解離および大動脈破裂によるマウスの死亡率を有意に改善することを見出した。内皮細胞でのERK5活性化は、炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-αによる細胞接着分子 (vascular cell adhesion molecule (VCAM)-1)の発現を抑制することがHUVECにおいて観察され、実際にLABマウスでもケルセチン投与によってVCAM-1発現の抑制が見られた。その結果、血管壁への炎症細胞浸潤が抑制されていることが、マクロファージ特異的マーカーであるMac-2の免疫染色およびF4/80のmRNA発現検討によって確認された。以上の結果から、内皮障害の存在が大動脈解離発症の鍵となっていることが明らかとなった。その分子メカニズムとしてeNOSによる内皮機能維持が重要であり、eNOSの低下が炎症細胞の浸潤、血管透過性の亢進などを惹起する。血管内皮細胞におけるERK5をピタバスタチンやケルセチンなど薬理学的手法によって活性化させることがeNOS発現の増加、すなわち内皮障害の改善による解離発症予防に有用である可能性が示唆された。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
Sci Rep
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10.1038/s41598-017-11089-0
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