研究課題
1. NMDAの硝子体内投与により誘発される網膜神経細胞死とmicroRNAの発現変動緑内障患者において認められる網膜神経節細胞死には,グルタミン酸により誘発される神経興奮毒性が一部関与している可能性が指摘されている.本実験においては,7-8週齢のC57BL/6Jマウスを用い,N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)の硝子体内投与により,神経網膜に興奮毒性を誘発した.NMDA投与8時間後において,miR-29bの発現は有意に増加し,miR-124の発現は有意に減少した.また,NMDA硝子体内投与18時間前にmiR-29b inhibitorあるいはmiR-124 mimicを硝子体内投与しておくと,NMDA投与7日後における網膜神経細胞数の減少が有意に抑制された.2. 網膜色素変性症モデルマウスにおける視細胞死とmicroRNAの発現変動本実験においては,網膜色素変性症モデルマウスとしてnmf363を用いた.nmf363マウスにおいては,15日齢(P15)以降miR-133aの発言が有意に減少していた.P15においてmiR-133a mimicを投与しておくと,microRNA mimic nagative cotrolを投与したマウスと比較して,P25における明順応下網膜電図の振幅が有意に大きく,錐体細胞数も有意に多かった.3, 考察以上の結果は,miRNA の発現変動が網膜変性疾患における網膜神経細胞死に関与していること,さらには,microRNAの発現を制御することにより,緑内障や網膜色素変性症をはじめとする網膜変性疾患における網膜神経障害の進行を抑制できる可能性を示唆している.本研究の成果は,網膜変性疾患に対する新規神経保護治療の開発のための一助となると考えられる.
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