研究課題/領域番号 |
15K07972
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
後藤 明彦 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (00297293)
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研究分担者 |
小松 則夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50186798)
宮澤 啓介 東京医科大学, 医学部, 准教授 (50209897)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | myelofibrosis / calreticulin / ruxolitinib / autophagy |
研究実績の概要 |
トロンボポエチン(TPO)依存性細胞株UT-7/TPOをovernightでfactor starbationし、様々な条件(10% FCS+TPOを含む完全培地、FCSを1%まで減らし、TPOを加えた場合とTPOも抜いた場合等)でp62やLC3の発現を検討した。TPOが存在するとオートファジーは全く誘導されず、血清とTPOともにない状態ではオートファジーが誘導されることを確認した。 新たにcalreticulin (CALR)の野生型、欠損型変異、挿入型変異にGFP遺伝子を結合したウイルス・ベクターをUT-7/TPOに導入し、変異CALRを発現するとGFPの蛍光で確認できる細胞株を作成した。これらの細胞株は予想通りTPOに非依存的に増殖し、FCSやTPOを抜いてもオートファジーが誘導されないことを確認した。 これらの新たに確立したモデル細胞を用いて、ルキソリチニブとクラリスロマイシンの効果を検討した。クラリスロマイシン単独は欠損型変異、挿入型変異いずれに対しても細胞増殖抑制効果、オートファジー誘導効果ともに有意な効果を示さなかったが、ルキソリチニブによって誘導されるオートファジーを有意に増強することがわかった。この結果は前年度まで用いていた2種の欠損型変異、2種の挿入型変異を導入したUT-7/TPOを用いた結果と同様であり、マクロライドがJAK阻害薬によるオートファジー誘導効果を増強することを確認することができた。しかしながら、ルキソリチニブの細胞増殖抑制効果はクラリスロマイシンを併用しても期待するほど増強されなかった。これはJAK経路とオートファジーの両者の阻害から細胞死を逃れる経路が存在する可能性を示唆していると考えられる。この経路を明らかにすることは、ルキソリチニブのクローン抑制効果を飛躍的に高めることに通じると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ルキソリチニブとクラリスロマイシンの併用効果が予想より不安定かつ不十分で、このコンビネーションにのみ拘っているのはリスキーと考えざるをえず、同系の薬剤との効果の比較が必要となった。またオートファジーとJAK経路以外に細胞死を逃れている経路がある可能性があり、「今後の研究の推進方策」に記したような方策での検討の追加も必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
ドラッグ・リポジショニングの対象を広げて、cell lineによるその効果の検証を丁寧に行っていく。 具体的にはマクロライドとしてクラリスロマイシンと同じ14員環のエリスロマイシン、15員環のアジスロマイシンの効果を検討する。また、我々は骨髄腫細胞に対してプロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブとCAMの併用がERストレスを強力に誘導することをすでに明らかにしており、CALR変異を導入した細胞でも、プロテアソーム系でのunfoldingタンパクの処理を阻害し、ERストレスを高めることが期待できる。そこで、ルクソリチニブ+マクロライドの系に既に臨床に用いられているボルテゾミブやカルフィルゾミブ、イキサゾミブといったプロテオソームを阻害する薬剤がどのような効果をもたらすか検証する。
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