研究課題
原発性骨髄線維症(PMF)の主要なドライバー変異であるcalreticulin(CALR)のtype1(del52)およびtype2(ins5)の変異遺伝子をPMFの病態の核となる巨核球系細胞のモデルとなるthrombopoietin(TPO)依存性細胞株UT-7/TPOに導入し、安定的変異遺伝子導入株を得た。ベクター遺伝子と野生型CALR遺伝子導入株をコントロールとして作成した。変異遺伝子導入株はTPO非依存性の増殖能を獲得しており、PMFの腫瘍性性格を反映していると考えられた。クラリスロマイシン(CAM)は単独ではCALR変異陽性細胞に対する増殖抑制効果を示さなかったが、ルキソリチニブ(RUX)との併用によりRUXの細胞増殖抑制作用を増強した。なおCALR type2変異導入のクローンのうち1種ではRUXに高い耐性を示した。細胞内タンパクのチロシンリン化状態を検討するとRUX添加でリン酸化は効果的に抑制されたがCAM単独ではリン酸化抑制は認めず、RUXとCAMの併用でもRUX単独と著変はなく、CAMのRUXによる増殖抑制効果増強はJAK2の恒常的活性化によるチロシンリン酸化のレベルとは関係ないことが示された。また、RUX抵抗性を示したクローンではRUXによるチロシンリン酸化抑制が認められず、RUX耐性機序の一つとして記憶すべきと考えた。無血清の条件下でLC3-IIの動態を詳細に観察するとCALR変異細胞では無血清下4時間までLC3-IIが経時的に増加するのが観察され、オートファジーが経時的に誘導されるのが示された。オートファジーを阻害するCAMはここをターゲットとしてRUXの作用を増強している可能性があり、安全性の確立したマクロライドのドラッグリポジショニングによるRUXとの併用はRUXの臨床効果を高めるのに有望な選択と考えられた。
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