研究課題/領域番号 |
15K07974
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
岡 淳一郎 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (40134613)
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研究分担者 |
山下 親正 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (30622188)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経鼻投与 / 中枢移行性 / GLP-2 / GLP-1 / Neuromedin U / うつ病 / 認知症 |
研究実績の概要 |
ストレスによるHPA系過剰活性化によるうつ病は既存抗うつ薬に抵抗性を示す。我々は、神経ペプチドGLP-2が治療抵抗性うつ病モデルマウスで抗うつ作用を示すことを報告し、臨床応用を目指して平成26年度に経鼻投与で抗うつ作用を発現する誘導体化を行い、国内特許及びPCT出願を行った。平成27年度に、経鼻投与用GLP-2誘導体が、抗うつ作用に重要と考えられる視床下部と海馬に有意な局在が認められること、治療抵抗性うつ病モデルマウスでも抗うつ作用を示すことを報告した。さらに、我々が既に認知症状予防及び改善作用を報告しているGLP-1やNeuromedin Uに同様の誘導体化法を適用することにより、経鼻投与で学習障害改善作用がみられることを報告した。PCT出願の内容は国際公開され、本年3月に米国とEUに特許出願を行った。 平成28年度は、経鼻投与後の中枢移行経路の同定とうつ病バイオマーカーへの作用について検討した。 蛍光標識GLP-2誘導体を経鼻投与し,3分後から経時的に脳内各部位の蛍光強度の測定と強制水泳試験を行った。その結果,経鼻投与されたGLP-2誘導体は、複数の経路を介して中枢へと効率良く移行している可能性が示された。さらに、ヒト大うつ病で報告されているバイオマーカーが治療抵抗性うつ病モデルマウスでも同様の変化を示し,経鼻投与したGLP-2誘導体がこれを回復させることを見出した。以上より、GLP-2誘導体は経鼻投与により臨床でも充分効果を発揮する可能性が示された。 当初計画よりも研究が進展したため、研究費の前倒し請求を行って経鼻投与用中枢作用性ペプチド誘導体を追加作製して実験に用いた。現在、製薬企業等との連携によりさらに臨床に近づくよう展開中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の実績報告書において、交付申請書には記載していなかったが,研究の進展に伴って喫緊の課題となった1) 経鼻投与用GLP-2誘導体が、経鼻投与後にどのような経路を経て脳脊髄液中に拡散するのかを明らかにし、以前に報告した脳室内投与によるGLP-2単体での作用部位および作用機序と同じか否かを中心に検討する。2) ヒトの研究から大うつ病のバイオマーカーと考えられている血清中成分が齧歯類でも変動するかを確認し、GLP-2誘導体の効果を判定する。また、3) 経鼻投与用Neuromedin U誘導体および経鼻投与用GLP-1誘導体を用いて、アルツハイマー病モデル動物での学習障害改善作用について検討する。4) 得られた結果を取り纏め、成果の発表を行う。さらに、5) 国内特許ならびに外国特許を取得後、本学トランスレーショナルリサーチセンターの協力を得て、小規模臨床研究の実施あるいは提携先企業の選択及び共同開発に取り組む、としていた。 上述のように1)と2)はほぼ達成され,3)は既に報告済み,4)は英文論文2報で公表した(Int. J. Pharmaceutics 515, 37-45, 2016 及び Peptides 87, 64-70, 2017)。5)に関しては、本年3月に米国とEUにも特許を出願している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の実験を継続するとともに、その成果に基づいて下記のような展開を行う。 平成29年度は最終年度であり、経鼻投与経路の組織及び行動実験データを論文発表用に纏めると共に、早い時点での関連神経内での存在を明らかにする。また、血清中だけでなく脳内各部位でのうつ病バイオマーカーやその他の物質変動をメタボローム解析で明らかにする。国内特許ならびに外国特許を取得後は、本学トランスレーショナルリサーチセンターの協力を得て、小規模臨床研究の実施あるいは提携先企業との共同開発の準備を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し請求で配分された研究代表者分と当初配分された分担研究者分のうち、単価の変動や消費税額の変動により予想より支出額を21,637円低く抑えることができた
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、上記金額も含めて主に物品費として動物や試薬代に使用予定である。
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