研究課題/領域番号 |
15K07976
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
亀井 淳三 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40161236)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | taste receptor type-2 / 咳嗽反射 / 咳受容体 / RARs / メサコリン |
研究実績の概要 |
苦味を受容するtaste receptor type-2(TAS2R)は舌のみならず、肺や喉頭など気道細胞上にも発現しており、気管支平滑筋の収縮および弛緩を調節していることが明らかにされている。そこで、本研究では気道収縮によるAδ線維の終末受容体rapidly adapting receptor(RAR)、いわゆる咳受容体の興奮性調節に関与する神経経路を明らかにする一環として、咳嗽に対するTAS2R受容体の関与を検討した。その結果、TAS2R作動薬のデナトニウムの吸入は、溶媒吸入群と比べて咳嗽数に有意な影響を与えなかった。しかし、デナトニウムの事前吸入は、クエン酸によって誘発される咳嗽数を濃度依存的かつ有意に抑制した。また、メサコリンにより誘発される咳嗽数もデナトニウムの事前吸入により濃度依存的かつ有意に抑制された。一方、カプサイシンの吸入によって誘発される咳嗽数に対してデナトニウムは有意な影響を与えなかった。気管支平滑筋収縮をトリガーとする咳嗽の誘発に関与する求心性線維および受容体は、それぞれAδ線維とRARであることが報告されている。本研究において、デナトニウムはC線維を介するカプサイシン誘発咳嗽に対して何ら影響を与えず、クエン酸およびメサコリンにより誘発される咳嗽を抑制することが明らかとなった。したがって、TAS2Rが気管支平滑筋収縮をトリガーとする咳嗽の治療ターゲットとなりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rapidly adapting receptor(RAR)の感受性亢進したモデルマウスを予備実験的に作成し、その亢進機序を確認したところ、当初予測していたBKcaチャネルの関与は少なくATP感受性Kチャネルが重要な役割を果たしておりことが確認できた。そのため、当初の計画から変更して、ATP感受性Kチャネルの関与を今後検討し行くよう計画を変更する。
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今後の研究の推進方策 |
TAS2Rが気管支平滑筋収縮をトリガーとする咳嗽の治療ターゲットとなりうる可能性が示唆されたため、平成28年度においてはRapidly adapting receptor(RAR)の感受性亢進したモデル動物を作成し、rapidly adapting receptor (RARs)感受性亢進時のメサコリン誘発の気道収縮をトリガーとする咳感受性の変化を明らかにする。そして、その咳感受性の変化におけるTAS2R 刺激薬あるいはATP感受性Kチャネル開口薬の効果を関連づけることで、気道収縮をトリガーとする咳感受性亢進時におけるRARs の機能変化に対するTAS2R およびATP感受性Kチャネルの影響を明らかにしていく。 現在までの進捗状況の項ですでに記載したが、予備実験段階で、気道収縮に伴う咳嗽の亢進には当初予測していたBKcaチャネルではなく、ATP感受性Kチャネルであることが示唆されたため、計画を変更してATP感受性Kチャネルの関与を追及していくことにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた試薬(BKcaチャネル阻害薬)の購入が、実験当初の予測と反して必要なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度には当初計画と異なった実験結果により使用試薬の変更をせざるを得ないため、その購入費として使用する予定である。
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