研究課題/領域番号 |
15K07977
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
森 友久 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (40366331)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シグマ1受容体シャペロン / 神経障害性疼痛 / Paclitaxel |
研究実績の概要 |
抗がん剤は、がん治療において必要不可欠であるが、痛みの原因となるがんを抑制させる抗がん剤自身が、神経を障害することにより、疼痛を引き起こすことが臨床現場で問題となっている。一方、シグマ1受容体シャペロンは痛みと密接に関わっていることも知られている。そこで本研究では、抗がん剤誘発神経障害性疼痛下におけるシグマ1受容体シャペロンの関与ついて検討した。 まず、抗がん剤誘発神経障害性疼痛下における脊髄の小胞体シャペロンタンパク シグマ1受容体シャペロンおよび BiP の変化を確認したところ、シグマ1受容体シャペロンのdownregulationが認められたが、BiP では変化が認められなかった。さらに、paclitaxel 誘発 シグマ1受容体シャペロン細胞内分布の変化をシグマ1受容体シャペロン-EYFP 安定発現 CHO 細胞を用いて検討を行ったところ、paclitaxel 処置後に CHO 細胞内の シグマ1受容体シャペロンの分布が小胞体から核膜付近に移動していた。これらの結果は、paclitaxelがシグマ1受容体シャペロンの細胞内分布を変化させ、且つ、downregulation を引き起こすことにより、 シグマ1受容体シャペロンとしての作用を抑制している可能性が考えられた。最後に、シグマ1受容体シャペロン作用薬の鎮痛効果についても検討を行った。抗がん剤誘発神経障害性疼痛モデルに対し、シグマ1受容体シャペロン作動薬である SA4503 の投与により鎮痛効果が認められたが、その鎮痛効果は シグマ1受容体シャペロン拮抗薬である NE100 によって抑制された。以上の結果より、SA4503 には抗がん剤誘発神経障害性疼痛に対して鎮痛作用があり、この鎮痛作用は シグマ1受容体シャペロンを介していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた研究と来年度に予定していた研究を併行しておこなっており、当初予定していたGSK-3βに関する研究も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
作用機序的にも明らかになりつつあり、今後はより細胞を用いた生化学的な研究にシフトしていく。特に、昨年度の予備的な結果として、シグマ1受容体シャペロンは、GSK-3βに直接作用する事により細胞保護作用に働いている可能性が低くなったため、Bcl-2とシグマ1受容体シャペロン相互作用に着目し、カスパーゼの活性化を伴ったapoptosis に至るシグマ1受容体シャペロンのミトコンドリアにおける細胞保護作用の機序についてtunnel およびannexin V およびWB 法によりCHO 細胞等を用いて明らかにする。特に、シグマ1受容体シャペロンのBcl-2に対する作用がミトコンドリアもしくは小胞体のどちらに存在するBcl-2に影響して細胞保護作用を示すのかを明確にしていく。 併行して、モルヒネの退薬症候におけるシグマ1受容体シャペロンの関与を生化学的ならびに行動薬理学的に明らかにする。
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