研究課題/領域番号 |
15K07978
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
清水 俊一 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (60196516)
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研究分担者 |
戸田 雄大 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (30573852)
根来 孝治 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (70218270)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | TRPM2 / 心臓 / 心機能 / 活性酸素 / マウス |
研究実績の概要 |
TRPM2は細胞の形質膜に存在し、酸化ストレスにより活性化され細胞内にCa2+を輸送する陽イオンチャネルである。我々は、平成27年度の研究で、心臓においてTRPM2 mRNAの発現が右心房、特に大静脈洞近傍に局在していることを認め、さらに大静脈洞近傍から単離した心筋細胞でTRPM2活性化が認められることを明らかにした。平成28年度は、摘出心臓の灌流標本を作製し、心電図を指標に心機能におけるTRPM2の役割を検討した。その結果、温度刺激(42℃)による心拍数の上昇が、TRPM2欠損 (KO)マウスの心臓(TRPM2 KO心臓)では野生型 (WT)マウスの心臓 (WT心臓)に比べて抑制された。また、アドレナリンβ刺激薬であるイソプレナリン導入による心拍数の上昇もTRPM2 KO心臓では抑制された。そこで、TRPM2阻害剤でもTRPM2 KOと同様の結果が得られるか検討したが、溶媒の影響が出てしまい結果を得るには至っていない。以上の結果より、TRPM2が心臓機能の調節に関わっている可能性が強く示唆された。一方で、TRPM2を活性化することが知られている過酸化水素の導入では、心拍数の低下が認められ、WT心臓とTRPM2 KO心臓の間で差は認められなかった。また、抗TRPM2抗体を用いて大静脈洞近傍の免疫染色を行い、タンパク質レベルでのTRPM2発現測定を試みた。しかしながら、3種類の抗TRPM2抗体を用い検討したが検出はできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、心臓におけるTRPM2チャネルの局在とその役割を明らかにすることを目的に研究を進めている。平成27年度の研究で、TRPM2 mRNAが右心房に発現していることをRT-PCR法で見出し、さらに大静脈洞の周辺部にTRPM2 mRNAが発現していることをin situ ハブリダイゼーション法で見出した。電気生理学的手法により、WTマウスの大静脈洞周辺部から単離した心筋細胞において、TRPM2の活性を測定することに成功した。一方、TRPM2欠損マウスより単離した大静脈洞周辺部の細胞では、TRPM2活性が認められなかった。このように、心臓においてTRPM2チャネルが大静脈洞近傍に局在して機能的に発現していることを明らかにできた。平成28年度は、摘出心臓の灌流標本を作製し、心電図を指標に心機能におけるTRPM2の役割を検討した。その結果、温度刺激(42℃)やアドレナリンβ刺激薬による心拍数の上昇が、TRPM2 KO心臓ではWT心臓に比べて抑制された。このように、TRPM2が心臓機能の調節に関わっている可能性も示すことができた。一方で、大静脈洞近傍に発現していると考えられるTRPM2をタンパク質レベルで捉えることや、TRPM2発現細胞の同定には至っておらず、若干予定より研究の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、大静脈洞周辺部にTRPM2が局在していることをmRNAレベルで認め、さらに単離心筋細胞だけでなく摘出心臓においてもTRPM2が機能していることを見出している。しかしながら、抗TRPM2抗体を用いた免疫染色法でのTRPM2タンパク質発現の確認やTRPM2発現細胞の同定には至っていない。今年度は、抗体濃度やブロッキングなど条件をさらに検討し、TRPM2タンパク質発現の確認を行う。また、洞房結節細胞のマーカータンパク質の抗体を準備し、TRPM2発現細胞の同定を試みる。さらに、平成28年度の研究で温度刺激やイソプレナリン刺激でTRPM2が機能している可能性を見出したことから、TRPM2阻害剤を用いてTRPM2 KO心臓と同様の結果が得られるかさらに検討を進める。 近年、我々は活性酸素刺激によるTRPM2の活性化が細胞内に2価鉄イオンを導入することにより促進されることを明らかにした。そこで、摘出心臓への2価鉄イオンの導入や2価鉄イオンキレート剤の処置により、温度刺激やイソプレナリン刺激による心拍数の増加がどのような影響を受けるか検討する。以上の研究を進めることにより、心臓におけるTRPM2の局在、発現細胞、心機能の調節における役割を明らかにできると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況が予定より若干遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究が若干遅れている分を含め、計画通りに実施する。
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