研究課題/領域番号 |
15K07981
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
小山 豊 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (00215435)
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研究分担者 |
道永 昌太郎 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (60624054)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エンドセリン / 脳浮腫 / アストロサイト / ETB受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では、脳病態時におけるエンドセリン(ET)の役割について、脳浮腫の産生に関与する因子との関連を検討し、平成28年度には以下の知見が得られた。
・これまでの研究において、ETB受容体拮抗薬であるBQ788が、マウス脳挫傷モデル(Fluid percussion傷害(FPI)モデル)での脳浮腫の発生を抑制する事が明らかとなった。BQ788の浮腫抑制メカニズムとして、脳障害部位での活性化アストロサイトの発生すること、脳浮腫惹起因子であるアストロサイト由来VEGFおよびマトリクスメタロプロテイナーゼ-9 (MMP9)の産生が抑制されることを明らかにした。 ・脳血管内皮細胞間の密着結合の低下が、脳浮腫の原因となる脳血管透過性の過剰な亢進を生じる事が知られている。本年度の研究では、マウス脳挫傷モデルでの脳血管透過性の亢進がBQ788で抑制されることが明らかとなった。また、脳血管透過性の亢進に伴う密着結合タンパクclaudin-5の減少がBQ788により抑制されることが明らかとなった。以上の結果は、脳内ETB受容体の刺激が、脳血管内皮細胞の密着結合を低下させ、脳浮腫を導く血管透過性の亢進を生じさせることを示唆する。 ・卵胞ホルモン剤や黄体ホルモン剤は、脳障害時の脳浮腫を抑制する事が報告されている。ETB受容体と脳浮腫との関連を明らかにするため、これらホルモン剤のアストロサイトET受容体への作用を検討した。17β-エストラジオールおよびプロゲステロンは、培養アストロサイトでのETB受容体mRNA発現量を減弱させた。また、ETB受容体タンパクも、これらホルモン剤で減少した。これらの結果は、卵胞ホルモン剤や黄体ホルモン剤の脳浮腫抑制機構の一部に、アストロサイトのET受容体の発現低下があることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規脳浮腫治療薬としてのET受容体遮断薬の有効性を明らかにする検討では、ETB受容体拮抗薬が脳浮腫を抑制する事に加え、その機構として、活性化アストロサイト減少や脳血管透過性の抑制など新たな知見が得られ、当初の計画通りに進んでいると評価される。一方で、神経再生促進作用に関する検討は、ETB刺激薬による明確な効果が得られておらず、異なる実験系での評価など次年度での継続した検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を受け、ET受容体拮抗薬の抗脳浮腫作用について、薬物の投与経路による薬効の変化やBQ788以外のET拮抗薬の作用について検討する。即ちこれまでの検討では、ET受容体拮抗薬をマウスの脳室内へと直接投与し、薬効を評価してきたが、用いる薬物の臨床応用を想定し、末梢からの投与でも有効なET拮抗薬を探索する。また、ET拮抗薬の有効な投与時期について明らかにするため、薬物投与の開始を脳挫傷前から傷害後の一定時期までの数点で行い、それぞれでの抗脳浮腫効果を検討する。 またET受容体刺激薬による神経突起の伸展については、実験結果の解析が容易な培養細胞を用いた実験系で行い、薬物の作用を評価して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の助成金の使用は、ほぼ計画通りにその多くが物品費に充てられた。しかし、H29年度より研究代表者が他の研究機関へ転出する事となり、当該年度の末時期に購入した消耗品を現所属機関で消費し切れなくなる事が予想されたため、それらの消耗品を次年度に転出先で購入する計画としたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り、この額は次年度での物品購入に充てる予定である。
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