研究課題
本研究では、脳病態時におけるエンドセリン(ET)の役割について、脳浮腫発生および神経突起の伸展に関与する因子との関連を研究し、平成29年度には以下の知見および実績を得た。・これまでの研究において、ETB受容体拮抗薬であるBQ788の脳室内投与が、マウス脳挫傷モデル(Fluid percussion傷害(FPI)モデル)での脳浮腫の発生を抑制する事、更に、浮腫抑制メカニズムとして、アストロサイト由来VEGFおよびマトリクスメタロプロテイナーゼ-9 (MMP9)の産生が抑制されることを明らかにした。本年度は、この成果を論文公表した(Michinaga et al., J.Neurotrauma.(2018))。・BQ788の抗脳浮腫作用について、脳血管のバリア機能を高めるangiopoietin-1(ANG-1)との関連を検討し、マウスFPIモデルへのBQ788投与が、ANG-1の発現を増大させることを見出した。また、このANG-1増加に伴い、脳血管内皮細胞に発現するANG受容体であるTie-2の活性化が生じることを明らかにした。これらの結果は、ETB受容体遮断による脳浮腫の改善に、ANG-1増加を介した脳血管バリア機能の亢進が関わることを示す。・Ephrinファミリーは、脳損傷時にアストロサイトの細胞膜上に発現し、神経突起伸展を抑制する。そこで、アストロサイトのEphrin発現に対するETの作用を検討した。ET-1は、培養アストロサイトでのEphrin-B1およびEphrin-B3のmRNA発現を低下させた。このことは、脳損傷時のET受容体の刺激が、Ephrinの発現を低下させ神経系再生過程での神経突起伸展を促進する可能性を示唆する。以上の知見を含め、本研究助成期間(平成27-29年)で得られた結果は、アストログリアETB受容体の脳機能改善薬の標的分子としての可能性を示す。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
J Neurotrauma
巻: Epub ahead of print ページ: -
10.1089/neu.2017.5421.
Biol Pharm Bull
巻: 40 ページ: 569-575
10.1248/bpb.b16-00991.
PLoS One
巻: 12 ページ: e0180610
10.1371/journal.pone.0180610.
Mol Pharmacol
巻: 92 ページ: 57-66.
10.1124/mol.116.107300.
Front Pharmacol.
巻: 8 ページ: 401
10.3389/fphar.2017.00401.