研究課題/領域番号 |
15K07982
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 准教授 (00411710)
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研究分担者 |
山口 太郎 摂南大学, 薬学部, 助教 (30710701)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感音難聴 / 音響外傷性難聴 / 細胞間コミュニケーション / 4HNE / パーオキシナイトライト / 一酸化窒素 / 聴覚機能 / カルパイン |
研究実績の概要 |
【目的】感音難聴モデルの1つである音響外傷性難聴モデルマウスの蝸牛外側壁らせん靭帯では、酸化ストレス産物である4-hydroxynonenal(4-HNE)付加たんぱく質群の発現が増加する。そこで、昨年度はマウス内耳蝸牛内に4-HNEを局所投与すると、有毛細胞をはじめ、蝸牛組織内に形態変化を起こすことなく聴力悪化を引き起こすことを明らかにした。本年度は、音響外傷性難聴発症メカニズムを解明するために、4-HNE誘発性難聴モデルマウスにおけるプロテアーゼインヒビターの影響について解析した。 【方法】Std-ddY系雄性マウスの蝸牛内正円窓上部に4-HNEを1時間留置し、蝸牛内に浸透させた。4-HNE処理後1、5および24時間後に蝸牛外側壁を切り出し、細胞抽出液を調整した。続いて、得られた細胞抽出液を用いて、細胞間コミュニケーション蛋白質の1つであるコネキシン30の発現について、イムノブロッティング法により解析した。さらに、4-HNEによる聴力悪化に対するPD150606(カルパインインヒビター)の影響を検討するために、4-HNE処理前にPD150606を正円窓上部に30分間留置し、蝸牛内に浸透させた。続いて、正円窓上部からPD150606を除去したのち、4-HNEを1時間留置し蝸牛内に浸透させ、1時間後の聴力を聴性脳幹反応(ABR)を指標に測定した。 【結果】イムノブロッティング法の結果、4-HNE処理24時間後ではマウス蝸牛外側壁においてコネキシン30の発現が対照群に比べて有意に減少した。また、ABR測定の結果、PD150606の前処理は、4-HNEによる聴力悪化を有意に抑制した。 【考察】PD150606は、4-HNE誘発性の聴力悪化を抑制することが明らかとなった。すなわち、4-HNE誘発性聴力悪化のメカニズムにカルパインの活性化が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、マウス内耳蝸牛内に4-hydroxynonenal(4-HNE)を局所投与すると有毛細胞をはじめ、蝸牛組織内に形態変化を起こすことなく聴力悪化を引き起こすことが明らかとなった。本年度は、この4-HNE誘発性の聴力悪化は、カルパインインヒビターの前処置によって抑制されることを明らかにした。すなわち、音響外傷性感音難聴の発症メカニズムの一部に4-HNEを介したカルパインの活性化が関与する可能性を見出した。本研究結果から、感音難聴の治療に対して、カルパインインヒビターが聴覚機能改善薬として有用である可能性が示唆された。また、本実験に関連して学術論文1報、学会発表20回を報告出来たことから、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
新たな感音難聴の治療に向けて、音響外傷性難聴の発症メカニズムの一部に4-hydroxynonenalを介した内耳内カルパインの活性化が関与することを明らかにした。そこで、音響外傷性難聴発症メカニズムをさらに詳細に明らかにするために、音響外傷性難聴モデルマウスの蝸牛内外側壁らせん靭帯において、ニトロチロシンが増加することに着目し、音響外傷に伴って発生する一酸化窒素(NO)および生成されるパーオキシナイトライトが難聴発症に関わることが強く示唆されることから、難聴発症メカニズムにおけるNOおよびパーオキシナイトライトの関与について解析を進める。具体的には、マウス内耳蝸牛内にNOC18(NO発生剤)あるいはSIN-1(パーオキシナイトライト発生剤)を局所投与することにより、マウスの聴覚機能に与える影響とNOおよびパーオキシナイトライトとの関連性について解析を進め、音響外傷性難聴発症メカニズムの解明に向けて研究推進を図る。平行して、得られた結果に基づいて難聴発症メカニズムに関連する分子をターゲットとした聴覚機能改善薬の探索と本研究が発展する可能性を追求していく。最終的に感音難聴に有用な薬物を選定し、感音難聴に対する新規治療法を構築・開発する。
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