研究課題/領域番号 |
15K07983
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
前田 定秋 摂南大学, 薬学部, 教授 (00135732)
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研究分担者 |
吉岡 靖啓 摂南大学, 薬学部, 准教授 (40330360)
石丸 侑希 摂南大学, 薬学部, 助教 (80611607)
山室 晶子 摂南大学, 薬学部, 助手 (20340862)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 緑内障 / 網膜神経節細胞死 / アペリン / 神経保護作用 |
研究実績の概要 |
緑内障は、眼圧上昇により網膜神経節細胞死が惹起され、重篤な視力障害を呈する眼疾患として知られているが、眼圧降下剤により眼圧を十分に降下させても、病態が進行する症例が数多く存在している。この事実は、眼圧以外の要因が緑内障における網膜神経節細胞死に深く関わっていることを示している。本年度は、内因性アペリンが緑内障における網膜神経節細胞死に影響を与えるかどうかを明らかにする目的で、アペリン欠損マウスを用いてNMDA投与による緑内障モデルマウスを作製し検討した。その結果、野生型マウスでは網膜神経節細胞死がほとんど起きない低用量のNMDAをアペリン欠損マウスに投与すると、網膜神経節細胞死が引き起こされることを見出した。このアペリン欠損マウスにおける網膜神経節細胞死の誘導機構を明らかにするため、NMDAによる網膜神経節細胞死を促進させるTNF-αの発現レベルを解析した結果、NMDAを投与したアペリン欠損マウスの網膜では、野生型マウスと比較して、TNF-αの著明な発現上昇がみられた。このアペリン欠損マウスにおけるNMDAによるTNF-αの発現上昇は、アペリンの硝子体内投与により抑制された。また、アペリン欠損マウスでみられるNMDA誘発網膜神経節細胞死は、TNF-α中和抗体の硝子体内投与により抑制された。 また、本年度導入した網膜電図記録装置を用いて、加齢に伴う網膜神経節細胞の光刺激応答の変化を解析した結果、老齢マウスでは、若齢マウスと比較して光刺激応答の低下がみられた。この加齢による光刺激応答の低下は、アペリンを欠損させることにより著明に促進された。 以上の結果より、アペリンを欠落させると網膜神経節細胞の脆弱性が亢進することが示され、緑内障における網膜神経節細胞死にアペリンが関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、眼圧以外の要因が緑内障における網膜神経節細胞死に関与するかどうかを明らかにすることを目的の一つとしている。今年度の検討において、野生型マウスでは網膜神経節細胞死が起きない低濃度のNMDAをアペリン欠損マウスに投与すると、細胞死が引き起されることを明らかにした。本研究結果は、本来、網膜神経節細胞死が生じない条件下でも、網膜のアペリンの発現が低下していると、細胞死が引き起こされる可能性を示唆している。 また、アペリンを欠損させることにより、加齢に伴う網膜神経節細胞の光刺激応答の低下が促進されることを見出したことから、加齢に伴う網膜神経節細胞の機能低下に対して、内因性アペリンが保護作用を示す可能性が示唆される。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
アペリン欠損マウスを用いた検討から、内因性アペリンが網膜神経節細胞死に対して保護作用を示すことを明らかにしたことから、次年度はこの成果をさらに発展させるため、アペリンの投与により網膜神経節細胞の保護作用がみられるかどうかを明らかにし、アペリンの緑内障に対する治療薬としての有用性について検討を行う。
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