アンジオテンシン II (Ang II)を介した血管収縮には Rho キナーゼを介したミオシン軽鎖ホスファターゼ (MLCP) の不活性化が重要な役割を演じている。本研究室では、MLCP の不活性化に Mitogen-activated Protein Kinase 系が関与していることを報告している。しかしながら、正常動物の血管と高血圧動物の血管において、Ang II による MLCP の不活性化を介した血管収縮に違いがあるかは不明である。【実験】高血圧モデルラットの作製は、4 週齢の雄性 Wistar ラット右腎動脈にクリップを装着し、腎動脈に狭窄部位を作製することで行った (2K1C 処置)。血圧は、2K1C 処置、あるいは、Sham 処置7 週後に tail-cuff 法を用いて測定した。血管収縮実験は、ラットの胸部大動脈からリング標本を作製し、マグヌス装置に装着することで行った。【結果と考察】Extracellular signal-regulated kinase (Erk) 阻害剤およびERK1/2 kinase (MEK) 阻害剤を前処置しAng II による血管収縮を検討したところ、これら阻害剤によってAng II による血管収縮は抑制された。また、Rho-キナーゼ阻害剤によっても、Ang IIによる血管収縮は抑制された。加えて、2K1C 処置群では、Src 阻害薬、JAK 阻害薬により Ang II の収縮が有意に抑制されたのに対し、Sham処置群では、それら阻害剤による抑制は認められなかった。 以上の結果より、高血圧状態下では、Ang II による収縮に EGF 受容体、MEK、Erk、Rho キナーゼに加え、Src、JAKが関与しているものと考察された。
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