研究課題/領域番号 |
15K07996
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古徳 直之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20362618)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 天然活性物質 / 海洋天然物 / 創薬化学 / 抗がん剤 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
研究室で独自に見いだした、がん微小環境に作用する海洋天然物を基軸とする創薬化学研究を行った。低酸素環境選択的がん細胞増殖阻害物質furospinosulin-1については、細胞内移行性の向上を目指した側鎖末端の構造修飾を検討した。すでに活性を保持することが確認されている、末端アルキンを有するアナログ化合物に対して、click反応を用いて種々の鎖長のポリエチレングリコール(PEG)鎖や極性官能基を導入し、活性発現に与える影響を検討した。その結果、当初の計画で有効であると考えていたPEG鎖の導入だけでは不十分であり、PEG鎖の末端にさらにアミノ酸等の極性官能基を導入する必要があることが明らかになった。PEG鎖の導入は血中滞留性の向上にも寄与すると考えられるため、今後の展開において重要な知見を得ることが出来た。 一方、グルコース飢餓環境選択的がん細胞増殖阻害物質として新たに見いだした新規ポリケチドbiakamide類については、各種スペクトル解析では明らかにできなかった立体化学の決定と、化合物の量的供給を目的とした不斉全合成を検討した。その結果、酵素的光学分割によって得られる文献既知の光学活性1,5-ジオール誘導体を出発物質に用い、Corey-Seebach反応を鍵工程とすることで、中心部分のポリケチド鎖を構築することに成功し、チアゾール基やクロロメチレン基等の特徴的な官能基の導入を経て、biakamide類の不斉全合成を達成した。同様の手法を用いて、可能性のある全立体異性体についてもあわせて合成し、それらのスペクトルを天然物と比較することで、天然物の絶対立体化学を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で研究対象としている二種の化合物いずれについても、当初の計画にほぼ沿った形で順調に研究が進んでおり、次年度以降の計画を開始できる状況が整っている。Biakamide類については確立した合成法を用いて大量合成も完了しており、腫瘍移植モデルマウスを用いたin vivo評価も視野に入れている。
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今後の研究の推進方策 |
Furospinosulin-1については、in vivoにおける血中滞留性の向上を目指したDDS製剤化を検討する。脂溶性の高い本化合物をリピドナノスフェア製剤とすることで、血中滞留性の向上と、Enhanced Permeability and Retention (EPR)効果による腫瘍への集積によって、薬効のさらなる向上と副作用の低減を目指す。 また、biakamide類については、確立した合成法を応用して各種類縁体を合成し、構造活性相関の知見を得る。立体異性体や官能基を部分的に欠損させた類縁体などを合成し、活性評価を行うことで、活性発現に必要な部分構造を明らかにするとともに、より強力な活性を示すリード化合物の創製を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
Biakamide類の合成研究において、効率的な全合成法を確立することができたため、合成に必要な試薬類の購入額を当初の想定より減らすことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降は、合成した化合物の医薬リード化合物としての有用性を検証するためにin vivo活性評価を行っていく予定である。実験動物の購入に加え、化合物を大量合成する必要があるため、これらの購入費用に充てる。
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