研究実績の概要 |
研究代表者らが明らかにした抗結核薬D-サイクロセリンの生合成経路においては, DcsAとDcsBがヒドロキシウレアを供給し, DcsEがO-アセチル-L-セリンを供給する。続いて, DcsDの作用によりO-アセチル-L-セリンのアセチル基がヒドロキシウレアに置換されることでO-ウレイド-L-セリンが生じ, DcsCの作用によりD-体に変換された後, ATP依存性酵素DcsGにより環状化されD-サイクロセリンが合成される。研究代表者はこれまでに, DcsDおよびDcsGの結晶構造解析に成功している。 平成27年度は, 得られたDcsDとDcsGの結晶構造を基に, 活性中心近傍に変異を導入し酵素特性がどのように変化するかを調査した。その結果, DcsDにおいては, 基質特異性に関与する残基の特定に成功し, その成果を論文として公表した。一方, DcsGにおいては, 酵素活性のために重要な残基を特定することに成功した。また, 本酵素がATP依存的にO-ウレイド-D-セリンを環状化する際に, カルバモイルリン酸が生じていることを明らかにし, 本酵素の触媒機構をある程度理解することができた。さらに, DcsAのX線結晶構造解析にも成功した。今後はこれらの情報を基に, 非天然型アミノ酸合成のための酵素に改変することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
DcsDに関しては, これまでの知見に基づき, S-フェニル-L-システイン合成活性を持つような変異体を作成する。また, DcsGとともに基質特異性の低いアミノ酸ラセマーゼを利用し, DL-ホモシステインをD-ホモシステインチオラクトンに変換することを試みる。DcsAに関しては, 変異体解析を実施し, 活性に重要な残基を特定する。
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