研究実績の概要 |
研究代表者が解明したD-サイクロセリンの生合成経路においては, DcsAとDcsBがヒドロキシウレアを供給し, DcsEがO-アセチル-L-セリンを供給する。続いて, DcsDの作用によりO-アセチル-L-セリンのアセチル基がヒドロキシウレアに置換されることでO-ウレイド-L-セリンが生じ, DcsCの作用によりD-体に変換された後, ATP依存性酵素DcsGにより環状化されD-サイクロセリンが合成される。研究代表者はこれまでに, DcsDおよびDcsGの結晶構造解析に成功している。 平成28年度は, DcsGを用いてDL-ホモシステインを光学分割することを試みた。DcsGをDL-ホモシステイン溶液に添加すると, L-ホモシステインとD-ホモシステインチオラクトンとに光学分割できることが判明した。また、基質特異性の低いアミノ酸ラセマーゼであるBsrVをDcsGとともに加えることで, DL-ホモシステインをすべてD-ホモシステインチオラクトンに変換できることを明らかにした。一方, DcsAに関しては, 活性中心付近に変異を導入し, 酵素活性に重要なアミノ酸残基を特定した。さらに, 反応物であるL-ヒドロキシアルギニンとDcsAの複合体構造を明らかにし, 本酵素の反応機構を推定した。
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今後の研究の推進方策 |
DcsGについてはホモシステインの光学分割に利用できることが明らかとなったが, この反応には高価なATPを必要とする。DcsGを発現させた大腸菌を光学分割のための触媒として利用できないかどうかを検討する。一方, DcsAに関しては, 共鳴ラマンスペクトル解析や計算科学的解析を実施し, その反応機構を明らかにする。
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