生体内に産生される活性酸素(ROS)による酸化ストレスは糖代謝疾患をはじめ、様々な疾患に関与している。過剰なROSの除去はこれら疾患の予防および治療に重要なアプローチである。既に、先行研究において医療用漢方製剤147種類の抗酸化活性の網羅的in vitro評価により、大柴胡湯、治打撲一方、麻子仁丸、および通導散の4剤が高い抗酸化活性を示すことを明らかにした。今回、大柴胡湯および治打撲一方2剤について、四塩化炭素誘発急性肝障害モデルマウスを用いて、in vivo における抗酸化作用を評価した。 In vivo抗酸化作用の評価は、薬物代謝系を介して発生するフリーラジカルにより肝障害が誘発される四塩化炭素誘発急性肝障害モデルを用い、また使用動物としてはICR系6週齢雄マウスを用いた。本研究では、大柴胡湯および治打撲一方について、肝障害の指標である血清トランスアミナーゼASTおよびALT値を評価した。ポジティブコントロールとしてはsilymarinを用いた。その結果、四塩化炭素を腹部投与しない正常マウスに水または大柴胡湯(2.5 g/kg(体重))を経口投与した結果、AST/ALT値に差は認められなかった。肝障害モデルマウスに大柴胡湯(2.5 g/kg(体重))を経口投与したところ、ASTおよびALT値の有意な低下(p<0.01)が認められた。さらに大柴胡湯および治打撲一方を0.25、1.0、および2.5 g/kg(体重)の3濃度で投与したところ、いずれの漢方薬においても投与濃度1.0 g/kg(体重)において、ASTおよびALT値の有意な低下(p<0.05)が認められた。
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