研究実績の概要 |
平成29年度は,アミノ酸構造を導入するテルペノイドとして,アビエタン型ジテルペノイドのアビエチン酸,およびエントベエラン型ジテルペノイドのイソステビオールを用いた誘導体合成実験およびがん細胞を用いた生物活性評価実験を行い,以下の成果を得た. 1.アビエタン型ジテルペノイドにシアノアミン構造を誘導した.シアノ基はカルボキシ基と電子的環境が類似しており,創薬化学分野ではカルボキシ基と生物学的に等価とみなされている.従って,シアノアミン構造はアミノ酸(カルボキシ基+アミノ基)の等価構造とみなす事が出来る.本化合物について,立体化学異性体を合成し,R体,S体のがん細胞に対する選択性を評価したところ,S配置を持つ化合物がR配置を持つ化合物よりもがん細胞に対する選択性が高い事が分かった.これは,通常細胞が取り込むアミノ酸がL型,つまりS配置を持つことと矛盾せず,アミノニトリル構造ががん細胞選択性を向上する上で有用であることが示された. 2.エントベエラン型ジテルペノイドのアルコール体に,多様なL-,D-型アミノ酸をエステル結合した分子を合成し,そのアポトーシス誘導作用機構をウエスタンブロット法で解析した.この結果,アポトーシス関連タンパク質のうち,Caspase-9, 開裂型Caspase-9,Bcl-2, Baxの量には変化が無く,Caspase-3, 開裂型Caspase-3,Caspase-8,開裂型Caspase-8の量が変化していたことから,ミトコンドリア経路ではないシグナル伝達系で,アポトーシスにより細胞死を誘導していることを明らかにした. 3.α-アミノ酸構造を持つ,エントベエラン型ジテルペノイドを合成し,その立体化学を含めた詳細な化学構造を,新Mosher法等を用いた手法により明らかにした.本研究は,ジテルペノイドから直接α-アミノ酸を合成した最初の報告例となる研究である.
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