本課題は,主に糖尿病や高脂血症などの種々生活習慣病の発症の基礎病態と考えられる肥満の形成過程,並びに糖尿病発症初期段階において観察される高インスリン血症によりもたらされる過度の肥満,種々生活習慣病の発症を抑制する物質を薬用にも供される食品から探索することを目的とする.今年度の研究成果としては,ブラジル生薬アンディローバ種子油より単離したリモノイド成分が肝細胞内の中性脂肪含量を低下させる事を明らかにし,食品薬学シンポジウムにて報告している.さらに,本課題のこれまでの研究成果から,ローズヒップ,センキュウおよびコウズクから得た薬理活性成分について種々の学会において報告した.現在,糖質負荷時のインスリン分泌に与える影響,投与量の最適化,作用機序等の検討を並行して進めている段階である.成果については,データが出そろった段階にて,論文として投稿する予定である. 一方,本研究の一環として実施した研究の成果として,生薬センキュウから得た抽出エキスおよびエキスから調製した脂溶性分画は,インスリン様の糖消費促進作用を有することを新たに見いだした.現在,薬理活性成分を同定すべく,これの探索研究も並行して実施している.本課題において得られた成果の代表的なものとしては,生薬センキュウの抽出エキスがマウス肝臓中中性脂肪含量の低下作用を有することを明らかにするとともに,耐糖能の改善作用を有する事を明らかにした.さらに,in vitro の実験に於いて,肝細胞内中性脂肪含量を低下させる化合物として senkyunolide 類を明らかにした.
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