研究課題
約20種類の神経栄養因子様活性化合物ライブラリーのうち,既に4種が神経幹細胞分化誘導活性を有することを見出しているので,残りのライブラリーをMEB5細胞と共培養し,確立している方法に従って各種神経細胞に対する分化率を評価し,神経細胞およびアストロサイトへ特異的に分化させる化合物の探索研究を行った。予備実験としてPC12細胞を用いたスクリーニングにより,センブリに分化誘導活性があることを見出しているので,まずは,センブリのスクリーニングを開始した。センブリのメタノール抽出物を酢酸エチル、クロロホルム、ブタノールで分配し、4つの分画を得た。それぞれのフラクションに対してPC12細胞を用いたスクリーニングを行ったが、活性が分散されていたことから、抽出方法の見直しをおこなった。70%エタノール及び熱水を用いて抽出し、抽出物をスクリーニングしたところ、70%エタノールでの抽出物に最も強い活性が認められた。エキスを溶媒分配し、4つのフラクションに分けて、それぞれスクリーニングを実施したところ、クロロホルム、酢酸エチル相に強い活性が認められた。また,グリア細胞のスクリーニング系を新たに確立させて,分化促進因子や栄養因子の分泌促進作用を有する化合物を見出す予定であったが、思ったようにグリア細胞の培養系をうまく確立させることができなかった。
3: やや遅れている
グリア細胞のスクリーニング系を新たに確立させて,分化促進因子や栄養因子の分泌促進作用を有する化合物を見出す予定であったが、思ったようにグリア細胞の培養系をうまく確立させることができなかった。いくつか検討、改良すべき項目はわかっているので、今年度早々には確立することはでき、スクリーニングを実施できると考えている。
残りの16種の神経栄養因子様活性化合物ライブラリーおよび植物抽出物ライブラリーをMEB5細胞を用いてスクリーニングし,神経幹細胞の分化誘導促進活性の有無を調べて,特定のニューロンサブタイプ(神経細胞,アストロサイト)への分化誘導促進物質を見出す。神経細胞分化誘導促進物質は既に4種見つかっているので,アストロサイト分化誘導促進物質を中心に探索する。また,植物抽出物に関しては,予備実験としてPC12細胞を用いたスクリーニングにより,センブリ,テンナンショウなど約10種類の植物抽出物に分化誘導活性があることを見出しているので,まずは,これらの植物抽出物からスクリーニングを開始する。一方,アストロサイトからは,脳由来神経栄養因子 BDNF や神経保護因子IL-6,さらに,神経幹細胞から神経細胞への分化を促進する因子の1つであるWnt3aが分泌されることが分かっている。MEB5細胞に白血病増殖抑制因子 LIF を作用させると,アストロサイトに特異的に分化するので,LIFによって分化させたアストロサイト,あるいは市販の初代アストロサイト細胞を用いたスクリーニング系を確立し,化合物添加によるBDNFやWnt3a等の各種液性因子分泌促進活性について検討する。また,神経細胞への分化率が高い場合,直接的な分化促進作用とアストロサイトからのWnt3a分泌促進作用による間接的な作用のいずれかが考えられるので,神経細胞への分化率の高い化合物に関しては,Wnt3aの分泌量を調べる。さらに,所有する約300種類の植物抽出物ライブラリーについても同様にスクリーニングし,活性物質を含む新たな植物資源を見出し,活性成分を探索する。MEB5細胞と今回新たに確立するグリア系細胞の2つのスクリーニング系を使用して,神経幹細胞分化・神経発育・恒常性維持能を促すグリア細胞標的化合物群と神経新生化合物群を見出す。
当該年度に確立する予定であったスクリーニング系がうまく構築できなかったため、消耗品の支出分が計画当初より少なかった。
スクリーニング系を確立させ、試薬、器具などの消耗品として使用する計画である。
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