研究実績の概要 |
最終年度では、前年度までに大量生産の目途がついた各種誘導体合成に適したトレハロース類縁体TRH-X(特許出願予定のため仮名)について、大型培養器による生産菌の培養と大量精製を試みた。2回の培養で乾燥原料の2%強である精製品520 gが得られ、動物実験を始めとする各種の実験に必要な量が賄えるようになった。また、今後は製糖企業との連携により、トレハロース類縁体の新たな原材料物質としての大量供給も期待できることとなった。この精製品を用いて29年12月-30年3月の期間、先端技術基盤支援プログラムを利用し、藤田保健衛生大学においてTRH-Xとトレハロースのアルツハイマー病モデルマウスへの治療効果の検討を行っており、現在データ解析中である。一部の結果を見る限り、前年度までに自所で行った実験の結果と同様、トレハロース投与により、少なくとも発病初期の短期間は有意な有効性が示された。またTRH-Xをもとに数十種類の誘導体化合物を合成し、オートファジー誘導効果を調べたところ、幾つかの誘導体でトレハロースを凌ぐ効果が確認された。本研究の一環である、多種培養細胞を用いた新たな神経変性疾患治療薬探索においては、副産物的なものであるが、3系統計8種の新規天然化合物の発見、報告に至った。 本研究期間全体としては、レンツトレハロースB, Cを始め数十種類の新たなトレハロース類縁体化合物を発見、あるいは合成してきた。上述のように、TRH-Xは大量生産が可能で、更なる誘導体の合成も行いやすく、いくつかの誘導体については強力なオートファジー誘導作用が確認されている。これらについては、今後、トレハロース類によるオートファジー誘導機構解明のための利用が期待でき、体内でのオートファジー誘導能の高さも期待されることから、本研究期間終了後も神経変性疾患や肝疾患などの治療薬としての開発検討を継続中である。
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