研究課題/領域番号 |
15K08018
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
増野 弘幸 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 技術専門職員 (80376714)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核内受容体 / ビタミンD / 胆汁酸 |
研究実績の概要 |
ビタミンD受容体(VDR)リガンドは骨疾患や抗がん剤などの治療薬になりうることから多くの合成リガンドの開発が行われており、一部はに臨床応用されている。しかしながらそれらはいずれも1,25-ジヒドロキシビタミンD3 [1,25(OH)2D3]の誘導体であり、化学的に不安定なセコステロイド骨格を含み、合成や取り扱いが煩雑となるなど問題点も多い。申請者は弱いながらもVDRアゴニスト活性をもつリトコール酸(LCA)に着目し、VDRとの複合体X線結晶構造解析を行い、LCAとVDRの相互作用メカニズムを明らかにした。この情報に基づきLCAをリードとする新規VDRリガンドの開発を行うこととした。 リトコール酸は側鎖カルボキシル基と3位の水酸基でVDRに水素結合している。このうちカルボキシル基はVDR結合に必須であると考えられることから、より多様な官能基を導入できるよう3位に炭素を直接結合した化合物を合成することとした。3位への炭素官能基の導入は側鎖をアルコールに還元後保護したLCAの3位をp-トルエンスルホニル化し、これに対してシアン化ナトリウムを用いてSN2置換反応を行い3β位へのシアノ基の立体選択的導入に成功した。また3β-シアノ基はアルデヒドへ還元したのち塩基で処理することにより3α体へと誘導することができた。以上のようにリトコール酸の3位に立体選択的に炭素結合を導入に成功した。これらの化合物を用いてLCAの3位に1,25(OH)2D3の3級水酸基を模倣した2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル基を導入した化合物を合成した。 合成した化合物について活性を評価したところ、3α異性体は3-β異性体よりも活性が高く、3α体はHL-60分化誘導活性で1,25(OH)2D3に匹敵する活性を示し、これまで知られているリトコール酸誘導体で最も高いVDR活性を持つ化合物の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた化合物群のうち3種の化合物の合成を完了した。合成の鍵反応である3位への炭素官能基の立体選択的導入反応の確立に成功したことから、構造活性相関の検討に必要な化合物群の合成は容易に達成可能であると考えられる。合成を達成した化合物のうち一つは予想を大幅に上回る活性を持つことが明らかとなり今後さらなる高活性化合物が合成できることが期待できる。また比較的活性が高い化合物については生物学的活性の検討をに一部とりかかることができた。
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今後の研究の推進方策 |
非常に活性の高い化合物を合成することに成功したため、今後は医薬品への応用を視野にさらなる生物活性の検討、とくにVDRリガンドで重要なカルシウムに対する活性の測定などを行いたいと考えている。また、化合物が安定供給できるよう合成ルートの改良にも取り組みたいと考えている。また今後の分子設計のためにVDRとの複合体結晶構造の解析も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
より高活性な化合物を得るためいくつかの化合物を合成する予定であったが、最初に得られたた化合物が予想を上回る高活性を示したため、生物活性の詳細な検討を行い化合物の設計に反映することが研究目的の達成に有効であると考え、新規の化合物の合成を翌年度以降に行うことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
比較的高活性な化合物の取得に成功したため、生物活性の測定をより応用的なものも含めて行おう計画している。またそれらの試験を行うため化合物の大量調製やそのための目的物の合成法の改良などを行おうと計画している。
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