研究課題
本研究課題の目標は、結核菌増殖とL-ラムノースとの関連性など、生体におけるL型糖の役割を解析するために最適なイミノ糖のデザイン合成と活性評価である。近年、結核菌増殖とL-ラムノースとの関連性など、希少糖であるL型糖に関する研究の重要性が次第に明らかになってきており、これらL型糖含有構造の生合成を選択的に制御できる化合物が望まれている。本年度はまず、L-ラムノシダーゼの基質であるL-ラムノースを忠実に擬態した1-deoxyrhamnojirimycinがL-ラムノシダーゼに対し、1mMという高濃度を添加しても阻害できないという我々の予備実験結果を元に、化合物のデザイン戦略としてピペリジン型イミノ糖ではなくピロリジン型イミノ糖を基盤とした化合物展開を模索した。天然にも広く存在する2,5-Dideoxy-2,5-imino-D-mannitol (以下、DMDP)およびその光学異性体であるL-DMDPを元に種々の関連化合物についてα-L-ラムノシダーゼに対する阻害活性を検討した。その結果、マンノースフォームを持つ1,4-dideoxy-1,4-imino-L-mannitol (以下、L-DIM)にIC50値が53μMの阻害が認められた。一方、光学異性体であるD-DIMは、本酵素に対1mM添加でも有意な阻害活性は認められなかったもののα-マンノシダーゼに対してはIC50値が4μMと強力な阻害を示した。そこで、現在、L-DIMを基本とし、側鎖の延長および末端の置換基の変更がα-L-ラムノシダーゼ阻害に及ぼす影響を精査している。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題の目標である結核菌増殖とL-ラムノースとの関連性など、生体におけるL型糖の役割を解析するために最適なイミノ糖のデザイン合成を行うためには、まず基本となるイミノ糖の母核構造を決定する必要がある。今年度はラムノースとの相同性が必ずしも必要ではないと判断し、ピペリジン型を基本構造とせずピロリジンあるいはアゼパンなど、環サイズの異なる種々のイミノ糖を系統的に測定していくことで最適な基盤化合物をデザインしていく予定である。今年度はまずピロリジンに着目し、L-DIMを中心とした複数のα-L-ラムノシダーゼ阻害剤を見いだせている。
今年度の成果により、ピロリジン型の場合、L-DIMをベースとした誘導体展開が効果的であると考えている。これまでの知見から、側鎖アルキルの延長及び末端の官能基が阻害活性に影響を与える例がいくつか認められており、詳細について更に検討していく予定である。また、効率的なDIMの合成手法についても合わせて検討していきたい。
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