研究課題
平成28年度の研究実施計画と成果1)種々のマウス及びヒト腫瘍細胞を同系マウス、あるいは免疫不全マウスに移植し、抗腫瘍性サイトカインや坑腫瘍抗体を産生するB(ビフィズス)菌を静脈内投与した時に、腫瘍組織に特異的に局在するか、坑腫瘍性を示すか検討:抗腫瘍性が期待される抗体のマウス型scFVの受容体への結合を確認し、担癌マウスでの腫瘍局在と抗腫瘍性を観察した。またマウス型サイトカインIFNgの受容体結合に伴う生理活性を確認し、担癌マウスでの腫瘍局在と抗腫瘍性を観察した。2)プラスミド型発現ベクターの保持率増強を目指し、不安定さに関与が考えられる制限酵素やCrysper/Cas等をノックアウトする:幾つかの酵素についてノックアウトしその効果は検討中。3)免疫反応面の安全性について:細菌感染における即時型の自然免疫応答は、好中球の炎症部位への浸潤であることから、B菌の宿主免疫反応性についてB菌と同じグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌を用いて、腹腔内投与で検証した。ビフィズス菌の熱処理死菌を腹腔内投与した所、6時間以内に好中球とマクロファージ/単球系細胞の浸潤が観察できた。浸潤細胞数や細胞分布については、黄色ブドウ球菌とB菌で特に差はなかった。この結果は、B菌感染において組織特異的な自然免疫細胞への刺激とケモカインを含めたサイトカイン産生が誘導されることを示している。一方、B菌は、生菌、死菌にかかわらず骨髄由来の樹状細胞やマスト細胞に対して刺激作用が弱く、LPSやブドウ球菌に比べ炎症性サイトカイン産生は1/10以下であった。この結果は自然免疫による好中球の浸潤と細菌の貪食・除去作用は生じるが、獲得免疫の為のアジュバント刺激が弱いことを示している。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りにほぼ進んでいるが、プラスミドの保持率亢進についての成果を得るにはもう少し検討が必要である。一方、B菌の免疫毒性が弱いことが判明しているが、より安全性の分子基盤についての基礎的検討が進展した。さらに安全性を増すための遺伝子ノックダウン、ノックアウトも視野に入る状況となった。
マクロファージなどに発現する補体受容体などにB菌は作用すると推定されるが、その責任分子の同定、B菌の抗体の抗原となっているB菌膜分子などの同定が課題である。それらの同定ができれば、それらの分子をコードする遺伝子の欠損株樹立を、プラスミドを安定化することを目的とする制限酵素などの欠損株の樹立と並行して進め、安全性の亢進を試みる。
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