研究実績の概要 |
核酸医薬への応用を目指し、圧倒的な結合親和性をコンセプトとして、糖部架橋型人工核酸2',4'-BNA/LNAに三環性シトシン誘導体 (フェノキサジン塩基) を導入したBNAP (2',4'-Bridged Nucleic Acid with Phenoxazine)を開発してきた。前年度にBNAPの合成を達成し、BNAPを組み込んだオリゴヌクレオチドは適切な5',3'-隣接配列下で2',4'-BNA/LNAやフェノキサジン塩基核酸を上回る優れた相補鎖核酸に対する二重鎖形成能を有することを見出した。 平成28年度は、BNAPで得られた知見に基いて更なる強化を図った人工核酸分子としてBNAPの9位にアミノエトキシ (AEO) 基を導入したBNAP-AEOを設計し、合成と基礎的物性評価を実施した。合成はBNAPで確立した合成法を応用することで効率よく達成し、またDNA自動合成装置を用いてオリゴヌクレオチドへの導入にも成功した。BNAP-AEOを組み込んだオリゴヌクレオチドは、相補鎖DNAやRNAに対してBNAPを遥かに上回る優れた二重鎖形成能とグアニン塩基に対する高い塩基識別能を有することを見出した。 一方で新たなコンセプトとして、核酸医薬に相応しい核酸塩基部の高機能化を図るべく、フェノキサジン塩基の9位に窒素原子を導入した9-アザフェノキサジン人工塩基核酸を設計し、合成・評価を実施した。その結果、既存のフェノキサジン塩基と同様の優れた二重鎖形成能を獲得するとともに、三重鎖核酸においてチミン様構造体として機能し、A:T二重鎖において優れた結合親和性を示した。さらに酸性条件下でその安定性が有意に向上した。9-アザフェノキサジン人工塩基核酸は従来のmRNAを標的としたアンチセンス法のみならず、DNA二重鎖を標的としたアンチジーン法への応用も期待される。
|