研究課題/領域番号 |
15K08026
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮本 智文 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (40182050)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ビスアセチレンアルコール / 標的分子 / 磁気ビーズ / テトラアセチレンアルコール / 細胞増殖阻害 |
研究実績の概要 |
前年度合成したビスアセチレンアルコール誘導体の構造活性相関解析により得られた結果を基に、標的分子探索プローブの合成を行った。当初、炭素鎖20の両末端に"1-yn-3-ol"ユニットを導入した、ビスアセチレンアルコールとアジドビーズのクリックケミにより探索プローブを合成する予定であったが、末端アセチレンの想定外の反応が予想されたため、プローブの分子設計を見直し、δ-valerolactoneから誘導した”hepta-6-yne-1.5-diol”と1,8-diodooctaneあるいはN-(3-aminopropyl)diethanolamineとのWilliamsonのエーテル合成を行った。しかし、3位の2級アルコールの反応性が高く、期待したエーテル体は得られなかった。この結果より、プロパルギル位のアルコールの反応特異性が、活性に関与していると推定し、新たに炭素鎖末端に各2個のアセチレンを有するテトラアセチレンアルコールを合成した。Hexadecanedialに5等量のethynylmagnesium bromideを反応し、末端に4個のアセチレンと3級アルコールを有する新規化合物を合成した。また、Y.Genisson等が末端にキラルなalkynylcarbinolを有する化合物の合成と活性を報告しており、論文中、長鎖アルキルの一端にalkynylcarbinolを有する化合物の活性も報告していたことから、stearylaldehydeのGrignard反応により、monoおよびbisアセチレンアルコール体を合成した。これら化合物についてHL60細胞株に対する増殖阻害活性試験を行った結果、両末端に4個のアセチレンを有する化合物は対応するビスアセチレンアルコールの約1/18の活性が確認された。一方、炭素鎖長20のモノアセチレンアルコールのIC50は3.2microMであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
”hepta-6-yne-1.5-diol”の3位アルコールの反応性が予想外に高く、2級アルコールをMOM保護しWilliamsonエーテルを行ったが、目的のエーテル体は得られなかった。新たに合成したモノ、テトラアセチレンアルコールにある程度の細胞増殖阻害活性を確認した。また、申請者が提案している長鎖ビスアセチレンアルコールの活性発現構造(MacroModelを用いたコンフォメーション解析)を11月にハワイ大学で開催された第8回US-Japanシンポジウムで発表したところ、Baylor大学Romo教授より高い評価と分子設計に関する有用な情報を提供していただいた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、16-hexadecanolide及びDimethyl Octadecanedioateを出発原料に、ethynylmagnesium bromideとのGrignard反応を行い、"1-yn-3-one"を一末端に、もう一端に1級アルコールあるいはカルボン酸有するアセチレンアルコールを合成している。このアルコールあるいはカルボン酸体にNH2あるいはepoxy磁気ビーズを固定化し、標的タンパク質探索プローブを合成する。 また、末端アルコールの部分酸化により得られるアセチレンアルコールのカルボン酸を合成し、アミノ磁気ビーズを用いたプローブ合成を行う。 また、標的タンパク質の抽出にはHeLa細胞を使用する予定であったが、H28年度の研究成果により、HL60細胞でも同等あるいはそれ以上の増殖阻害活性が認められたことから、標的細胞の抽出にはHL60細胞株を使用する予定である。
|