研究課題/領域番号 |
15K08029
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
太田 公規 東北医科薬科大学, 薬学部, 講師 (90347906)
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研究分担者 |
皆瀬 麻子 東北医科薬科大学, 薬学部, 助手 (30710397)
遠藤 泰之 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (80126002)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 化合物ライブラリー / ホウ素クラスター / ランダムスクリーニング / カルボラン / 抗腫瘍活性 / ラジカル補足作用 |
研究実績の概要 |
本研究では、ホウ素化合物ライブラリーの継続的な構築とランダムスクリーニングから、ホウ素化合物を利用した応用的な創薬研究とホウ素の新たな物理化学的性質を理解する基礎研究を目的としている。 ホウ素化合物ライブラリーのスクリーニングから見出したホウ素化合物におけるラジカル補足作用について、その詳細を探るべく構造活性相関やメカニズムについて検討した。ホウ素クラスターであるカルボランだけではラジカル補足作用を示さず、ラジカル補足作用には電子吸引性置換基を有するベンゼン環が必須であった。すなわち、電気的な要因がカルボラン環に影響し、ラジカル補足作用が生じていると考えられた。また驚くべきことに、カルボラン誘導体1分子で10個以上のラジカルを補足できることが明らかとなった。このことからクラスターを構成しているホウ素原子がラジカル補足に関与していることが強く示唆された。ラジカル補足速度は、現在臨床で用いられているラジカル補足剤であるエダラボンよりも緩やかであるが、1分子当たりの補足可能なラジカル数が5倍以上ということから今までにないタイプのラジカル補足剤として大いに期待される。 ホウ素化合物ライブラリーのスクリーニングから、エストロゲン受容体分解誘導物質を見出した。ホウ素クラスターを用いたエストロゲン受容体拮抗薬を数々創製してきたが、見出した化合物はエストロゲン受容体の発現量を有意に低下させ抗エストロゲン作用を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化合物ライブラリーへの登録化合物数は目標値までは達していない。ライブラリーの質を向上させるべく、今までにない構造のホウ素クラスター化合物の合成を進めている。 前年度にランダムスクリーニングで見つかったラジカル補足作用を有する化合物をもとに、更に効率的にラジカルを補足できる化合物を設計し合成した。予想通り、強力なラジカル補足作用を示した。また、見出したカルボラン誘導体のラジカル補足能について詳細を検討したところ、驚くべきことにラジカル補足剤として臨床で使用されているエダラボンの約5倍以上のラジカル補足能が見出された。また、エダラボンと比較し、カルボラン誘導体はラジカル補足速度が遅いことが明らかとなった。今までにない新しいタイプのラジカル補足化合物として、今後ラジカル補足メカニズムの詳細を精査すると共に、生化学ツールとして抗酸化剤の新たな機能性もしくはラジカル補足における生物学の発展に貢献できるよう共同研究を進めたいと考える。 また、ライブラリーのスクリーニングからエストロゲン受容体の分解促進による抗エストロゲン作用を示す化合物(SERD)も見出された。現在、カルボン酸を持つカルボラン誘導体をリードとし、合成した化合物のSERD活性における構造活性相関を精査している。また、SERD活性発現におけるメカニズムの探索を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
化合物ライブラリーの構築を継続しながら、多目的スクリーニングを行う予定である。 ミドルアップ研究では、抗腫瘍活性もしくはラジカル補足作用を示した化合物の細胞レベルもしくは動物レベルでの試験、メカニズム探索などを進め、医薬候補化合物もしくは生化学ツールとして有用なレベルまで成長させる。 ミドルダウン研究では、ITCを用いた物理化学的スクリーニングから超分子として機能する化合物の探索を進め、カルボランの新たな相互作用などを含めた基礎化学研究を充実させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラジカル補足における評価系を安価な系で構築したことと、今年度はホウ素化合物を購入しなかったため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はホウ素化合物を購入するため、今年度未使用額も含めて科研費はほぼ完全に使い切る予定である。
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