研究課題/領域番号 |
15K08033
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
青山 洋史 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (40374699)
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研究分担者 |
伊集院 良祐 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (40442925)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | セリンプロテアーゼ / 酵素阻害 / 血液凝固 / ホスホン酸エステル |
研究実績の概要 |
本研究ではフタルイミド骨格を有するトリプターゼ阻害剤を基盤とし、その阻害剤構造の中心に位置するカルボン酸エステルをホスホン酸エステルへと変換することで同じファミリーに属するトロンビンへの親和性が大きく変化することに着目して研究を行っている。そしてその酵素選択性への認識因子を含むメカニズムの解明研究を目的としている。 研究開始時にリードとした化合物の酵素阻害活性は、メカニズムの解明研究へと展開するには不十分であったため、本年度はまず、高酵素選択性・高活性の阻害剤開発を志向した構造展開を行った。その結果、リード化合物のフタルイミドを開環体として捉えることのできる安息香酸エステルへと変換した場合には、ホスホン酸エステル構造を有していてもトリプターゼへの選択性が保持されることを見出した。本結果から、未だ未知となっているトロンビンに対するリード化合物の結合部位がフタルイミド構造に対して優位な親和性を有していると考えられる。 また、リード化合物のフタルイミド部位と末端の塩基性部位とをつなぐリンカー部の長さを検討した結果、炭素数が4から5のアルキル鎖が最適であることも酵素阻害活性試験において確認した。 さらに先行研究における酵素阻害試験では、トリプターゼ、トリプシン、トロンビンの三種類の評価のみであったが、より高次な酵素選択性に関する知見を得るための対象としてプラスミンやキモトリプシンなどの評価系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の本研究課題の採択が10月下旬であったため、年度内の研究期間はそれ程長くはなかった。そのため、行う実験の手順や開発を予定している化合物の数を減らすなど、ある程度の制限が生じた。そのような状況下ではあったものの、酵素評価系の拡張や関連類縁体の合成と生物活性評価、構造活性相関解析に一応の成果を得ることができた。 学術論文に関しても、一報ではあるが掲載まで至らせることができたため、本年度の進捗状況としては概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は研究初年度とは違い、一年を通じて研究期間に充てることができる。平成27年度で行った構造活性相関では一定の知見は得られたものの、構造に対する「活性の向上」および「選択性の向上」の両方を同時に満たす条件を見出すには至っていない。したがって来年度はまず、平成27年度で行った構造活性相関から得られた知見をもとにして、更なる構造展開を行い、構造の最適化を図っていく。 また同時に、開発する化合物群はリン原子が不斉中心となるため、各鏡像異性体を分離する必要がある。したがって、上記の構造展開研究と並行して、鏡像異性体の分離法の検討を行う予定である。具体的には光学活性な酸性物質を用いた再結晶法を行う方針ではあるが、必要に応じてキラルHPLCを用いた分取による分離法も検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の採択決定が平成27年10月下旬であり、予算執行が可能となる時期も遅かったため、本研究課題で予定していた設備備品の購入に至ることが出来なかった。また同様の理由により年度内の研究期間が短くなり、消耗品費が想定を下回ったため、次年度使用額が発生しました。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の計画としては、平成27年度に導入を予定していた設備備品の購入費として利用する予定である。また、予定していた備品が設置されることで大学の共同機器の仕様による律速が軽減されることが期待できるので、消耗品費に関しても平成28年度単独で予定していた額に比べて使用額を増額する予定である。。
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