研究課題/領域番号 |
15K08037
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
池田 潔 広島国際大学, 薬学部, 教授 (40168125)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒトパラインフルエンザウイルス (hPIV) / 蛍光イメージングプローブ / 病原性ウイルス / シアル酸 / HN糖蛋白質シアリダーゼ / in silico創薬 |
研究実績の概要 |
高病原性トリインフルエンザウイルス(H5N1) 型に代表される新型インフルエンザウイルスの出現による感染拡大が世界的に懸念されている。病原性ウイルスの一つであるヒトパラインフルエンザウイルス (hPIV) はかぜ症候群の原因ウイルスの一つで, 小児の初期感染において気管支炎や肺炎などの重篤な症状を引き起こすことが知られているが、hPIV感染症を予防するワクチンや治療薬も皆無である。すでにパラインフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性を高感度、迅速、簡便に局所染色できる新規蛍光イメージングプローブを開発し、シアリダーゼの視覚化に成功している。さらにインフルエンザウイルスとの識別も可能である。本研究ではin silico創薬プロセスにより、新規ヒト病原パラインフルエンザウイルスの診断法の確立と、HN糖蛋白質シアリダーゼ認識部位と阻害部位を併せ持つハイブリッド型hPIVの治療薬の創出を目指している。近年、インフルエンザウイルスのシアリダーゼに対する親和性がN-アセチル-シアル酸誘導体よりも N-プロピル-シアル酸誘導体の方が高いという知見が報告された。今回、ヒトパラインフルエンザウイルス特異的な蛍光検出薬の合成を目的としてシアル酸の窒素上のアセチル基を非天然型アシル基に変えたシアル酸を蛍光標識した誘導体の合成を行った。その結果、シアル酸の窒素上の天然型のアセチル基を非天然物型に置き換えた蛍光組織染色可能なシアリダーゼ基質1a-cの合成に成功した。今後、シアリダーゼ基質の識別や相対的な検出感度を調べるために、化合物1a-cのhPIVシアリダーゼ酵素との親和性を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでにパラインフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性を高感度、迅速、簡便に局所染色できる新規蛍光イメージングプローブを開発し、シアリダーゼの視覚化に成功している。さらにインフルエンザウイルスとの識別も可能である。HN蛋白質に対して高い親和性を示した特異的な蛍光基質の構造からhPIVのHN糖蛋白質のシアリダーゼの活性中心との親和性の予想が可能である。本研究ではin silico創薬プロセスにより、新規ヒト病原パラインフルエンザウイルスの診断法の確立と、HN糖蛋白質シアリダーゼ認識部位と阻害部位を併せ持つハイブリッド型hPIVの治療薬の創出を行う。申請年度内で新規蛍光イメージングプローブとLEDランプ(ブラックライト)を組み合わせることにより診断キット化を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
HN蛋白質に対して高い親和性を示した特異的な蛍光基質の構造からhPIVのHN糖蛋白質のシアリダーゼの活性中心との親和性の予想が可能である。申請者はhPIVのHN糖蛋白質のシアリダーゼに対する特異的な顔料系色素蛍光基質の開発に成功していることから、hPIV診断法の開発の可能性は極めて高い。さらに特異的な蛍光基質の構造からhPIVのHN糖蛋白質のシアリダーゼの活性中心との親和性が予測できることから、本研究では分子モデリングにより、これまでの実績を基盤に新規ヒト病原パラインフルエンザウイルスの診断法の確立と治療薬の創出を行う。さらに有望な化合物については大量合成を行い臨床応用への可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、これまでの実績を基盤に新規ヒト病原パラインフルエンザウイルスの診断法の確立と治療薬の創出を行う。さらに有望な化合物については大量合成を行い臨床応用への可能性を検討する。そのために本研究の重要な試料であるシアル酸を必要量購入する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
シアル酸(500gx2)30万円
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