研究実績の概要 |
申請者は、hPIV 特異的な蛍光検出薬の合成を目的として、hPIVのHN糖蛋白質のシアリダーゼの活性中心との親和性を期待できることから、シアル酸の4位にグアニジル基を持つリレンザ型のシアル酸誘導体と蛍光剤BTP-3のハイブリッド型シアリダーゼプローブの合成を行った。シアル酸を出発原料として4工程で得られるデオキシ体を塩素化し鍵化合物(2)とした。鍵化合物2と蛍光剤BTP-3(3)を縮合させ4を収率27%で得た。4のアジド基を還元およびグアニジル化し5とし、5を脱保護し1aを収率12%で得ることに成功した。次にHN糖蛋白質のシアリダーゼの活性中心に対するシアル酸の4位の置換基効果を調べるために、シアル酸の4位に種々のアシル置換基を持つシアル誘導体の合成を行った。すなわち4のアジド基を還元した後、アミノ基に種々のアシル基の導入を行い、脱保護を行ってBTP-3を含む4-アシル-シアル酸誘導体1(Me,Et,iPr, N3, Bz, tBu,etc)を合成した。HPIVに対する抗ウイルス活性を測定した結果、1aは、ほとんど活性を示さなかった。ウイルスのシアリダーゼ中心へのグアニジル基の親和性が非常に高いために、シアリダーゼが機能せずシアル酸と蛍光剤とのグリコシド結合を加水分解できなかったと推定される。さらに酵素と基質との親和性を調整するために、シアル酸の4位にアシルアミド基を持つ1b-c誘導体の抗シアリダーゼ活性を測定した。その結果、抗シアリダーゼ活性の強さはアセトアミド基>プロパンアミド基>2―プロパンアミド基の順であったが、いずれも蛍光も阻害反応もほとんど見られなかった。今後、分子モデリングにより置換基の大きさを調整し、hPIV糖タンパク質シアリダーゼに対する特異性と高い抗ウイルス活性を持ったハイブリッド型hPIVの治療薬の開発を行った。
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