研究課題/領域番号 |
15K08041
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研究機関 | 富山県薬事研究所 |
研究代表者 |
小笠原 勝 富山県薬事研究所, 主任研究員 (30443427)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 |
研究実績の概要 |
昨年度の検討から、ベツリン誘導体A(以下、誘導体A)の抗腫瘍効果にはT細胞が関与することが示唆された。そこで今年度は、オブアルブミン(OVA)をモデル抗原として発現するマウスEG7細胞の皮下移植モデルを用いて、誘導体Aの抗腫瘍効果及びその作用メカニズムへの細胞傷害性T細胞(CD8陽性T細胞)の関与について解析を行った。その結果、誘導体Aを腫瘍移植後2日目より連日16日目まで腫瘍内に直接投与したところ、EG7の皮下増殖は有意に抑制された。誘導体Aの抗腫瘍効果へのCD8陽性T細胞の関与を明らかにするため、抗CD8a抗体をマウスに投与してCD8陽性T細胞を除去したところ、誘導体Aの抗腫瘍効果は顕著に減弱した。これらのことから、誘導体Aの抗腫瘍効果にはCD8陽性T細胞が関与していることが明らかとなった。そこで、誘導体AがOVA特異的なCD8陽性T細胞の誘導に影響を与えているのかを明らかにするため、腫瘍移植後17日目に腫瘍内に浸潤したCD8陽性T細胞を単離し、OVAテトラマーを補足するCD8陽性T細胞の割合をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、OVA特異的なCD8陽性T細胞は誘導体Aの投与により有意に増加した。その一方で、誘導体A投与群では、腫瘍内に浸潤したCD8陽性T細胞の腫瘍重量当たりの絶対数は対照群に比較して顕著に減少した。このためOVA特異的なCD8陽性T細胞の腫瘍重量当たりの絶対数は、対照群と誘導体A投与群との間で明らかな差を認めなかった。そこで、誘導体Aの抗腫瘍メカニズムについて、免疫抑制解除の視点からOVA特異的CD8陽性T細胞におけるPD-1分子に着目し、その発現量をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、誘導体A投与群では腫瘍内に浸潤したOVA特異的CD8陽性T細胞におけるPD-1分子の発現量が低下している傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、誘導体Aの抗腫瘍メカニズムを詳細に解析し、医薬品開発に繋げることを目指してしている。現在までに、誘導体Aの抗腫瘍効果が顕著に認められるがん移植モデルを明らかにするとともに、EG7皮下移植モデルでは細胞傷害性T細胞が抗腫瘍メカニズムに寄与していることを明らかにした。さらに、誘導体Aに作用メカニズムには、PD-1分子の発現制御が関与している可能性を示した。これらのことから、当初の研究実施計画の目標をおおむね達成しているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の検討結果を受けて、平成28年度はT細胞に着目して解析を進め、その重要性を明らかにした。平成29年度も引き続きT細胞に絞り研究を進める。研究を進める上での手技、手法、並びに、誘導体Aの作用メカニズムの解析を免疫抑制解除の観点から進める点では、当初計画の達成目標どおりに研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定していた動物を用いた実験の一部を次年度に繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の当初の研究計画の遂行に、平成28年度予算のうち29年度に繰り越した74,653円と29年度分として請求した助成金とを合わせて充てるものとする。平成29年度は当初の研究計画に準じて研究を遂行するものであるから、使用計画は交付申請書に基づくものとする。
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