研究課題/領域番号 |
15K08042
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新開 泰弘 筑波大学, 医学医療系, 助教 (10454240)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カドミウム / 活性イオウ分子 / シスタチオニンγリアーゼ / シスタチオニンβシンターゼ |
研究実績の概要 |
環境汚染重金属であるカドミウムは、長期曝露によりヒトの健康を障害する可能性が指摘されている。一方、生体はカドミウムを感知し、メタロチオネインの誘導を介してカドミウムを不活性化する防御システムを有している。しかしながら、カドミウムに対するメタロチオネイン以外の生体防御系の理解は乏しい。本研究では、カドミウムに対する新奇防御系としてのパースルフィドやポリスルフィドなどの活性イオウ分子の役割とその細胞応答機構を明らかにすることを目的としている。本年度は、カドミウムに対する活性イオウ分子産生酵素群の防御的役割とその細胞応答性について検討した。その結果、カドミウムに曝露したマウス初代肝細胞において、cystathionine γ-lyase (CSE)のmRNAレベルの誘導が観察された。また、カドミウムの曝露濃度依存的にcystathionine β-synthase (CBS)タンパク質の発現量が増加した。そこで、野生型マウスとCSE欠損マウスの初代肝細胞におけるカドミウムの細胞毒性を検討したところ、CSE欠損型の初代肝細胞はカドミウムに対して有意に高い感受性を示した。このとき、細胞内における活性イオウ分子の量は確かに低下していた。次に、ウシ大動脈血管内皮細胞(BAEC)において、CBSおよびCSEをノックダウンしたときの細胞内活性イオウ分子量を蛍光プローブSSP4で検討したところ、特にCSEのノックダウンにより活性イオウ分子の量が低下していた。これと一致して、CSEのノックダウンによりカドミウムの細胞毒性は増強した。以上より、活性イオウ分子はカドミウムの毒性に対して防御的に働いていること、また細胞はカドミウムに対して活性イオウ分子の産生に関わる酵素群の誘導に働く応答性を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、パースルフィドやポリスルフィドなどの活性イオウ分子が高い求核性を有することから、親電子性を有するカドミウムに対して防御的に機能するという仮説の基に成り立っている。本年度は、その大前提の仮説である活性イオウ分子のカドミウムに対する防御的役割を明らかにすることができたことから、本課題の研究の計画はおおむね順調に進展していると言える。更に、活性イオウ分子の産生に関わる酵素群がカドミウムに対して応答して誘導されることが示唆されたことから、その分子メカニズムについて今後詳細に検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、活性イオウ分子産生に関わる酵素群がカドミウムに対してどのような経路を介して応答しているのかを、小胞体ストレス応答系の関与も含めて詳細に解析する。また、細胞内活性イオウ分子の量をサプリメントなどで調節することにより、カドミウムの毒性を化学防御できる可能性についても検討を進める予定である。
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