研究課題/領域番号 |
15K08043
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
鳥羽 陽 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50313680)
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研究分担者 |
柿本 健作 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 企画部, 主任研究員 (40435889)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンチョウ / 有機汚染物質 / 多環芳香族炭化水素 / 残留性有機汚染物質 / 生体曝露評価 |
研究実績の概要 |
タンチョウの生息環境からの化学物質曝露は、卵殻薄化や孵化率の低下を引き起こす可能性があり、化学物質の曝露状況の把握は保護活動を行う上で重要である。近年の湿原の減少や生息数の増加により、その生息域は人間の生活圏に近づいており、人為起源の化学物質への曝露量が増える等の生息環境の悪化が懸念される。本研究では、1989年より25年間にわたり釧路市動物園にて保存されているタンチョウのへい死個体の臓器・組織(胸筋、肺、肝臓等)に蓄積されている残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants; POPs)や多環芳香族炭化水素類(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons; PAHs)を定量し、曝露量や毒性発現の可能性を推定することを目的とする。平成29年度は、胆汁に排泄されるPAH代謝物である水酸化PAH(OHPAH)について、開発した液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)による分析法を用いて2環のナフタレンから4環のピレンまでの9種のOHPAHについて定量したところ、ピレンの代謝物が最も高濃度に検出された。食餌等から曝露したPAHの中でピレンの曝露量が相対的に高いと考えられた。また、肝臓や脂肪組織からのPAH類の分析に関する検討も実施した。さらに、筋肉組織中のPOPs濃度を測定した結果について解析し、POPs濃度が日本の他の鳥類で観察された濃度よりも低いことは、生息域の汚染が低いことに加えて、タンチョウは雑食性のため、肉食性の鳥類よりPOPsを蓄積しにくいと結論付けられた。
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