研究課題/領域番号 |
15K08045
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
清水 美貴子 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (90396391)
|
研究分担者 |
橋口 正行 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (10271355)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | プロバイオティクス / 関節リウマチ / Methotrexate / 薬物動態 / 副作用軽減 |
研究実績の概要 |
本研究では、炎症性疾患の予防・治療における”プロバイオティクス”摂取の臨床的意義を解明する事を目的に、研究を遂行している。本年度は、慢性関節リウマチ患者由来滑膜細胞(HFLS-RA)およびCollagen-Induced Arthritis (CIA) ラットを用いて、プロバイオティクスが示す抗RA作用の詳細な分子機構の解明を目指すと共に、Methotrexate(MTX)との併用によるRA治療の効率化の可能性について検討を行った。 1.HFLS-RAを用いた検討:プロバイオティクスとしては、代表的な腸内細菌であるLactobacillus 属の菌種(L.casei)と、その整腸作用により”特定保健用食品“として市販されているBifidobacterium属の菌種(Bif)を用いた。炎症性サイトカイン刺激による細胞遊走の増加に対し、両菌種は抑制作用を示す事を明らかにした。昨年度までの結果と合わせ、これら菌種は、抗炎症作用に加え、関節破壊抑制作用を有する可能性が示唆された。 2.RAモデル動物を用いた検討:Bifを経口摂取させたCIAラットでは、炎症性シグナル伝達経路の抑制に起因する抗RA作用が示されることを明らかにした。また、BifとMTXとの併用における抗RA効果の増大の一要因として、BifによるMTXの体内動態の変化を示唆する結果を得た。さらに、Bifとの併用により、MTXの副作用である肝機能障害を防ぐことが期待できる結果を得た。 以上のin vitroおよびin vivo実験の結果より、プロバイオティクスは抗炎症や骨破壊抑制等の点から抗RA効果を示し、MTXとの併用により、抗RA効果の増強およびMTXの副作用軽減につながる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までのin vitroでの結果を踏まえ、本年度は、新たにCIAラットを用いてin vivoでのプロバイオティクスの抗RA効果発現の検証と、その作用機序の解明に重きを置いて研究を遂行した。特に疾患モデル動物の作成や評価条件等の確立に時間がかかったことが影響し、in vitroでの炎症性疾患治療薬の体内動態に対するプロバイオティクスの影響および詳細な作用機序に関する検討に遅れが生じた。薬物濃度の測定系の確立等にも時間を要している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度終了しなかったin vitroでの炎症性疾患治療薬の体内動態に対するプロバイオティクスの影響評価と、炎症性疾患治療におけるプロバイオティクス摂取の医療経済学的評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、3つの項目より構成されている。当初の計画では、1項目ずつ順次着手する予定であったが、ウエット研究である2項目について、予備検討を含め、同時に進行させているため、当初の予算配分に変更が生じた。また、本年度予定していた治療薬の薬物動態評価に遅れが生じ、その為の予算を次年度に持ち越すこととなった。 本年度実施予定であった、炎症性疾患治療薬の薬物動態に対するプロバイオティクスの影響評価を行う際の、医薬品、分析用試薬およびカラム等の購入費として使用する。
|