研究課題/領域番号 |
15K08047
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
山本 千夏 東邦大学, 薬学部, 教授 (70230571)
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研究分担者 |
鍜冶 利幸 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (90204388)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオオルガノメタリクス / 血管内皮細胞 / プロテオグリカン / パールカン |
研究実績の概要 |
研究代表者らは有機-無機ハイブリッド分子のバイオロジーをバイオオルガノメタリクスと名付け,研究を展開している。血管内皮細胞が産生するヘパラン硫酸プロテオグリカンの大型分子種であるパールカンは内皮細胞の増殖や抗血栓性に重要であり,重金属毒性の標的にもなっている。血管内皮細胞において有機アンチモン化合物PMTASがパールカン選択的に誘導するというこれまでの知見をもとに,新たにPMTASとは異なる分子構造をもつ亜鉛とロジウムを含む化合物がパールカンの発現を抑制することを明らかにした。 血管内皮細胞において,パールカンはcyclic AMPおよびPKCにより発現が抑制されることが報告されているが,このロジウム化合物(Ph-Phen)によるパールカンの発現抑制には,これらの既知の発現抑制メカニズムに依存しないことが示された。さらに,内皮細胞の増殖・生存に関わるシグナル経路であるMAPKs,Aktおよび転写因子NF-κBの関与についても検討したがPh-Phenによるパールカン発現抑制には影響しなかった。従って血管内皮細胞におけるPh-Phenが新規のパールカン発現調節機構によってその産生を抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライブラリーの中から新たに見出したPh-Phenのパールカン発現抑制メカニズムについて検討したが,既知の制御機構には依存せず,新規のパールカン発現調節機構が示唆された。アフィニティークロマトグラフィーの確立については難航しているが,パールカンの発現ベクターの作成等,実験系の変更についても検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
パールカン選択的に誘導するPMTASだけでなく,パールカンの発現を抑制するPh-Phenを見出した。この2つの化合物を活用し,パールカンの新規発現調節機構について検討を行う。さらには,内皮細胞機能調節因子であるサイトカイン/増殖因子等との関連についても検討を加える予定である。研究計画最終年度である29年度では,バイオオルガノメタリクスの研究戦略により血管内皮細胞パールカン合成を担う生体分子を明らかにし,内皮細胞おけるパールカンの合成調節の分子機構解明について総括する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アフィニティークロマトグラフの確立に難航したため,この系による実験が進まなかったためである。そのため次年度研究予定であったreal-time PCRによるパールカンの遺伝子発現に関する実験系で阻害剤等を用い細胞内シグナル伝達系の研究を遂行した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は研究計画最終年度であるので,計画的に使用し年度内での使用を行う。
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