研究課題
糖尿病はアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患の危険因子であると考えられているが、その分子メカニズムについては不明な点が多い。本研究では、糖尿病における慢性炎症とその制御に関わる脂質メディエータ(ケトン体と長鎖脂肪酸)及び各標的タンパク質の機能に着目し、情報伝達にかかわるネットワーク構成因子を標的とした神経変性疾患に対する新たな治療方策の探索を目指す。ミクログリアによるTLR4刺激によるサイトカイン産生に対するβヒドロキシ酪酸の受容体HCA2(GPR109A)と脂肪酸結合タンパク質(FABP)の作用を分子レベルで明らかにし、免疫応答の制御と神経細胞保護機能への作用を検証する。ミクログリア細胞株BV-2とマクロファージ様細胞RAW 264.7 を用いて、LPS刺激によって惹起される炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IFN-βなど)の発現上昇に対するナイアシンとβ-ヒドロキシ酪酸の効果を検討した。リアルタイムPCRによる各種サイトカインmRNAの定量により、低濃度のLPS刺激時にHCA2アゴニストによる抑制効果が認められた。その作用はNF-κB経路の阻害によるものであることを示すプレリミナリーな結果を得ている。p38とErk-1/2に対する効果については引き続き検討しているところである。HCA2のGRKによるリン酸化部位であるセリン及びスレオニンをアラニンに置換した変異体を遺伝子導入した細胞による効果を現在調べている。
3: やや遅れている
HCA2下流の細胞内情報伝達系の解析において、βアレスチンの効果をRNA干渉法を用いて調べる事を計画していたが、実施できていない。RT-PCRによるサイトカイン産生に対する効果とウエスタンブロッティングによる細胞内情報伝達系(NF-κBやMAPK経路)の解析に時間を要したため。
RNA干渉法によりβアレスチンをノックダウンし、HCA2によるサイトカイン産生抑制に対する影響を調べる。TLR4刺激により活性化される細胞内情報伝達家とのクロストークを解析する。各種脂肪酸結合タンパク質(FABP)の発現とHCA2刺激によるその変動をRT-PCRで調べる。
消耗品・試薬の使用が若干少なくなったため。
抗体や遺伝子工学実験用試薬の代金に充当する。
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