平成29年度研究実施計画書に基づき,以下に関する知見を得た。 1. 小麦ふすまによるCrおよびMoの吸着機構:昨年度までに得られた結果を基に,詳細な吸着機構の解明に取り組んだ。その結果,電子線マイクロアナライザによる測定結果より,CrおよびMoの吸着には,小麦ふすまの表面が強く関与していることを見出した。さらに,CrおよびMoの分子形態は,水溶液pHの影響を受けることが明らかとなり,小麦ふすまの表面特性と各種分子形態の相互作用が主な吸着機構であることを明らかとした。 2. バジルシードおよびタピオカによるSrおよびCsの吸着機構:バジルシードによるSrおよびCsの吸着機構には,構成成分の一つである糖類“グルコマンナン” の関与を明らかとした。特に,Csの吸着時においては,バジルシードをマンナナーゼ処理することにより,Csの吸着能がほぼ完全に消失した。これらの知見は,これまで先行研究で報告されておらず,Csの新たな吸着機構の一つであることを明らかとした非常に有用な知見であると考えられる。また,タピオカはSrおよびCsの繰り返し吸・脱着が可能であり,特に,Csの吸・脱着能は,94.1%以上と非常に高値を示した。さらに,吸着機構の一部には,物理的特性である比表面積の関与が明らかとなり,植物バイオマスの吸着剤としての有用性を明らかとすることに成功した。 以上,本研究期間(平成27年-29年)では,植物バイオマスである小麦ふすま,バジルシードおよびタピオカを用いることで,希少金属であるクロム,モリブデン,ストロンチウムおよびセシウムの回収技術を確立でき,植物バイオマスの有効利用による廃棄物量の低減,また希少金属の安定供給・確保に寄与できることを明らかとした。
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