研究課題/領域番号 |
15K08055
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
佐藤 朝光 福岡大学, 薬学部, 助教 (90369025)
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研究分担者 |
大塚 靖 鹿児島大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00244161)
見明 史雄 福岡大学, 薬学部, 教授 (50248522)
入江 圭一 福岡大学, 薬学部, 助教 (50509669)
佐野 和憲 福岡大学, 薬学部, 講師 (50534343)
鹿志毛 信広 福岡大学, 薬学部, 教授 (80185751)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蚊 / 宿主探索行動 / 生体アミン / DNAマイクロアレイ / 乳酸菌 |
研究実績の概要 |
蚊は、人から人へ様々な細菌やウイルスを運ぶことが知られている。近年の我が国における蚊媒介性ウイルス感染症の拡大は、その対策が、我が国の公衆衛生上、ますます重要な課題の一つとなっていることを示している。私達は、蚊に特徴的な“吸血対象(宿主)を探索する行動(宿主探索行動)”を抑制することが、吸血行動に至る蚊の数を減らし、蚊媒介性ウイルス感染症の発生阻止に有効であると考えた。したがって、本研究では、蚊に特異的な宿主探索行動に関与するタンパク質を標的とした、蚊の宿主探索行動を抑制する制御ツールの創出を目指している。 生体アミンは、昆虫の中枢において、神経伝達物質や神経修飾物質として様々な行動を制御することが知られている。私達は、本研究により、蚊の一種であるヒトスジシマカを用いて、生体アミンであるドパミンだけでなく、オクトパミンが、雌蚊の宿主探索行動を制御することを確認した。また、幼虫、蛹、成虫の各ステージのヒトスジシマカの回収し、発現遺伝子に対するcDNAライブラリーを作製した。そして、次世代シークエンサーGS junior (Roche 社)を用いて、トランスクリプトーム解析を行った。この解析により、ヒトスジシマカDNAマイクロアレイを作製する準備が終了し、生体アミンによる宿主探索行動のシグナル伝達系を解明するためのツールを作製することが可能となった。さらに、微生物製剤として利用する予定のヒトスジマカより単離された細菌の同定として、ゲノムDNAのGC 含量を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雌のヒトスジシマカを用いて、羽化後 0日目から 6日目における雌蚊の宿主探索行動を観察した。その結果、雌蚊の宿主探索行動は、羽化後、徐々に増加することが示された。一方、ドパミンを投与した蚊とオクトパミンを投与した雌蚊の宿主探索行動は、投与しない雌蚊のような宿主探索行動の増加は観察されなかった。また、雌蚊の宿主探索行動は、羽化後3日目から6日目にかけて有意に減少した。以上の結果より、ドパミンとオクトパミンが雌蚊の宿主探索行動の制御に関与していることが確認された。 発育ステージ等の異なる14種類の蚊の試料を回収した。回収した組織から ISOGENを用いてTotal RNAを抽出した。 Total RNAは、 DNase Iで処理し、RNeasy Plus Mini Kitを用いて精製した。次いで、OligotexTM - dT30 <Super> mRNA Purification Kitを用いてmRNAを調製した。rRNA の混入率は、Agilent 2100 バイオアナラザにより測定した。続いて、mRNAより作製したcDNAライブラリーに対し、GS Juniorによるシーケンスを行った。以上の結果、mRNAの試料におけるrRNAの混入率は、約10%前後であった。また、約百万リード以上の配列が取得された。 ヒトスジシマカから単離されたEnterococcus属細菌のDNA塩基組成を確認するために、M17液体培地で培養した細菌よりゲノムDNAを精製した。精製したゲノムDNAは、Nuclease P1、および、Alkaline Phosphataseで酵素処理した。そして、HPLCにより測定した。その結果、GC 含量は約40 mol%であった。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーで取得したリードを用いて、De novo assemblyを行い、コンティグを作製する。De novo assemblyを行うプログラムは、アルゴリズムの異なるCLC Genomics Workbench v8.1およびMIRA 4.0.2を用いる予定である。そして、このコンティグを用いて、ヒトスジシマカDNA マイクロアレイを作製する。続いて、ヒトスジシマカDNAマイクロアレイを用いて、生体アミンにより発現が変化する雌蚊の遺伝子を検出し、宿主探索行動制御に関わる遺伝子の候補を決定する。なお、DNA マイクロアレイの解析により発現量の変動が示された遺伝子は、リアルタイム PCR 法により確認する予定である。 一方、ヒトスジシマカから単離されたEnterococcus属細菌の同定では、DNA-DNA ハイブリダイゼーションによる相同性の決定や、API社のキットを用いた生化学的解析を行う予定である。
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