研究課題/領域番号 |
15K08056
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
黒川 健児 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (80304963)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細菌宿主相互作用 / 樹状細胞 / 黄色ブドウ球菌 / 免疫賦活化 / 細胞壁タイコ酸 |
研究実績の概要 |
株化されたヒト樹状細胞株を対し、黄色ブドウ球菌細胞壁画分がIL-23誘導能を有することを、mRNAレベル、タンパク質レベルで確認した。他のサイトカインについて調べたところ、IL-6も分泌誘導されることが確認された。これらサイトカインの誘導に関わる細胞側のシグナル分子を同定する目的で、遺伝子発現の抑制方法について検討した。Anti-MYD88 shRNAを発現するレトロウイルス(ネオマイシン耐性)を作出し、ヒト樹状細胞株に感染させてネオマイシンで選択した後にMYD88の発現量を定量したところ、抑制率は最大で50%程度で、期待に添うものではなかった。 IL-23の誘導に関わる細菌性リガンド分子の同定を目的として、黄色ブドウ球菌の細胞壁タイコ酸の合成変異株を作出し利用した。細胞壁タイコ酸の変異株の一株について細胞壁画分に由来する可溶化画分を調製したところ、IL-23分泌能が失われることが確認された。一方、細胞壁タイコ酸のある種の修飾酵素の欠損株は活性を保持しており、IL-23分泌に細胞壁タイコ酸の完全な修飾構造体は必要ではないことが示唆された。 予想に反し、細胞壁タイコ酸画分のIL-23分泌能は失われるにも関わらず、粗抽出液画分ではIL-23分泌能が親株と同等に見出された。従って、IL-23の誘導能を有する細菌性リガンドは、細胞壁タイコ酸以外にも存在し、少なくとも2種類あることが示唆された。この第二因子をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、生化学的に同定することを試みたが、活性因子の同定には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
樹状細胞にIL-23分泌能を有するリガンドは少なくとも2種類あることを見出した。細菌側の欠損株が活性を失う表現型から、第一のリガンドは細胞壁タイコ酸であると考えられる。一方、第二因子の同定には至っていない。 Anti-MYD88 shRNAを発現するレトロウイルスベクターを用いたノックダウンの試みは期待に添わず、方法論の変更を余儀なくされた。宿主側因子を同定する方法論の改変が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、構築したアッセイを用いて、樹状細胞にIL-23分泌を誘導する黄色ブドウ球菌リガンドの必須構造を決定する。また、宿主側の受容体の同定を試みる。宿主細胞の遺伝子発現の抑制方法については、レトロウイルスベクターのレンチウイルスベクターへの変更、選択薬剤のPuromycinへの変更により、実験系の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
分光光度計の購入予定であったが大学内の事情の変化から購入不要となった。翌年度分として請求した助成金と併せて、シークエンス解析用ソフトや低分子精製用の高分離能のカラムを購入する。
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次年度使用額の使用計画 |
これまで使用してきたシークエンス解析用ソフトのバージョンが古く、パソコンの新しいOSに対応しない状態でやりくりしてきたが限度があるので、新規購入したい。
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