研究課題
株化されたヒト樹状細胞を用い、細胞壁画分によるIL-23の誘導能を検出するバイオアッセイ系を確立した。黄色ブドウ球菌の細胞壁の構成因子の欠損株を用いたリガンド解析から、IL-23誘導能は細胞壁タイコ酸の他、細胞壁タイコ酸以外にも存在することが示唆された。そこでこの第2因子を生化学的に同定することを試みた。第二因子の活性は不溶性の細胞壁画分を複数のペプチドグリカン加水分解酵素で可溶化した後にも認められた。しかしながらクロマトグラフィーの溶出画分にはその活性を回収できなかった。本研究は細胞壁タイコ酸-ペプチドグリカン共有結合体をマウス皮内接種後のサイトカイン群発現解析を起点とし、共有結合体のマウス腹腔投与における樹状細胞のIL-23発現に着想を得て開始した。その再現性の調査の過程で、可溶化した細胞壁画分は、可溶化前の不溶性画分に比べてMRSA感染防御能が低いことが分かった。つまり細胞壁画分は不溶性でも可溶化後でも腹腔投与12時間後をピークとして腹腔への好中球や単球の浸潤が認められるが、その程度は可溶化により1/4以下に低下した。好中球走化性因子の腹腔内量は細胞壁画分の投与後3時間をピークに増大したが、可溶化画分は1/10以下であった。細胞壁画分の腹腔投与後12時間後にMRSA株を腹腔感染させてマウスの生死を観察した結果、不溶性画分を事前投与したマウスは90%がMRSAによる感染死を免れたが、可溶化画分ではその効果は減弱した。FITCにて蛍光修飾した不溶性細胞壁画分は、腹腔投与後に貪食されリンパ節に集積する像が観察された。細胞壁には複数の自然免疫リガンドがあるが、不溶性画分ではこれらが集まり、また拡散が妨げられて局所的な濃度が高まることで免疫系をより活性化できるのかもしれない。自然免疫リガンドを同定出来たのちの応用に際しては、複数のリガンドを粒子化するメリットを検討したい。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Journal of General Virology
巻: 98 ページ: 2171~2180
10.1099/jgv.0.000865